セールスイネーブルメントとは?定義や成功事例を解説

目次

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  • セールスイネーブルメントとは何を意味するのか?
  • 実施することで何が変わるのか?
  • 成功させるにはどうすればよいか?

上記のように考えている担当者は多いでしょう。セールスイネーブルメントはビジネスの中長期的発展において重要な手法です。もしかするとこの取り組みが企業の利益やあり方を大きく変えるかもしれません。そこで本記事では以下について解説します。

  • セールスイネーブルメントの定義や特徴
  • 実施する場合のメリットと成功のポイント
  • セールスイネーブルメントの取り組み事例

本記事を読めばセールスイネーブルメントの基本的な部分はすべて理解できるはずです。ぜひご参考ください。

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セールスイネーブルメントの定義や特徴

まずはセールスイネーブルメントが何を意味するのか理解しておきましょう。そのあとで期待できる変化や重要視されるようになった背景について解説します。

セールスイネーブルメントとは何か

セールスイネーブルメントとは、営業活動の最適化を目指し、業績向上へつなげるアクションを意味します。よりわかりやすく言えば「営業がうまく回るための、組織によるありとあらゆる工夫」と考えて問題ありません。

セールスイネーブルメントの具体的な取り組み例として以下が挙げられます。

  • 組織全体での営業成績の分析および改善
  • 営業担当者のスキルアップ研修
  • 商談時のトークスクリプト製作
  • 得られたノウハウ・ナレッジの共有
  • 顧客に提示する営業資料の作成
  • Webサイトコンテンツの投稿
  • 営業支援ツールの導入・開発

これらを組織的に計画立てて実施するのがセールスイネーブルメントの基本です。つまり「先輩が後輩に営業のコツを教えた」程度では、これに該当しません。セールスイネーブルメントはあくまでも組織的な取り組みです。

セールスイネーブルメントが重要視される背景

セールスイネーブルメントが重要視される背景として、多くの企業が以下について悩んでいる点が挙げられます。

  • 営業活動における全体的なレベルアップができていない
  • 営業自体を数値的に把握できていない
  • 顧客ニーズをキャッチできていない

まず営業活動のレベルアップはすべての企業が向き合っているポイントです。そのためには定量的に活動内容を評価する必要がありますが、ほとんどの場合数値化して追いかけられていないのが実情。

また顧客行動の複雑化によって見えづらくなったニーズを、未だ掴めていないという企業も少なくありません。こういった点を解消してクリアに営業活動を管理・向上させるため、セールスイネーブルメントが注目されているわけです。

先ほど挙げた3つの課題は時代の変遷によって失われるものではありません。今後もセールスイネーブルメントは必要とされ続けるでしょう。

セールスイネーブルメントが実施された場合に期待される変化

セールスイネーブルメントが実施された場合には以下のような変化が期待できるでしょう。

  • 営業成績が分析、改善され目に見える形で向上する
  • 営業マン全員が成績を上げられるようになる
  • 営業活動自体が最適化されて、費用対効果が改善する

他にもあらゆる変化が期待されますが、主だったところで上記が挙げられます。本質的なことを言えば営業部が強化され、投じたコストに対して得られるリターンが最大化されるというわけです。

もちろんセールスイネーブルメントを実施したからといって、必ずしもうまくいくわけではありません。しかし取り組み内容が合理的であれば、自ずと営業活動にもよい影響が出てくるでしょう。

セールスイネーブルメント市場の近況

セールスイネーブルメント市場は、拡大傾向にあると考えられます。

市場調査会社のITRによれば、2018年から2022年までのセールスイネーブルメントツール市場は右肩上がりと予測。2018年には6億円規模だったのが、2024年には135億円まで成長すると見込んでいます。

(引用:ITR-ITR Market View:SFA/統合型マーケティング支援市場2021

働き方の多様化にともなってオンライン商談が加速したことも、セールスイネーブルメントとは好相性。時代の流れもありセールスイネーブルメントはより必要な施策として重宝されるでしょう。

セールスイネーブルメントを実施するメリット

セールスイネーブルメントを実施するメリットとして以下5つが挙げられます。

  • 営業力の向上
  • 営業活動の業務標準化
  • 施策ごとの効果が数値化される
  • 業績不信のビジネスパーソンの支援
  • マーケティング技術やMA化との融和

それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。

営業力の向上

セールスイネーブルメントを実施する最大のメリットは営業力の向上にあります。

営業活動はどうしても個人のスキルや裁量、あるいは経験に依存する部分が大きいもの。しかしセールスイネーブルメントを用いることでナレッジや資料が共有され、より高度な営業活動を実施できるようになります。

企業にとって営業力は売り上げに直結する重要なポイント。これを向上させるセールスイネーブルメントには取り組む価値があるといえるでしょう。

営業活動の業務標準化

営業活動の業務標準化が期待できるのもセールスイネーブルメントのメリット。営業は属人化しやすく、業績に格差が生まれることも多々あります。

会社全体を俯瞰して見ると営業活動が非効率化していることを意味します。

しかし、共有を進めることで独占されていたナレッジとノウハウが誰にでも行き渡り、業務を標準化できるでしょう。営業部全体のパフォーマンスは高い水準で安定するようになります。

施策ごとの効果が数値化される

セールスイネーブルメントでは施策ごとの効果が数値化されます。具体的に取り組みを始めるなら、以下のような指標についてツールなどを用いながら追跡することとなります。

  • 商談から成約に至るまでの平均日数
  • 訪問件数
  • 顧客維持率
  • セルアップ成功率
  • コンバージョン率
  • SQL移行率

これらの指標に対して各施策がどの程度貢献しているか数字で評価することが可能です。そうすることで戦略を取捨選択し、さらには営業パーソンもフェアに評定できるようになります。

業績不信のビジネスパーソンの支援

セールスイネーブルメントを実施することで業績不振のビジネスパーソンを支援することが可能です。

営業活動ではエース格として活躍する人材もいれば、数字を挙げられず苦しむ社員もいます。こういった現象は会社にとって不利益なのはもちろん、本人からしてもかなりつらい状況です。

しかしセールスイネーブルメントを実施することでナレッジや資料、あるいは教育が強化されます。その結果業績不振にあえいでいた本人が勘所を掴み、企業にとって欠かせないビジネスパーソンへ生まれ変わることも。

マーケティング技術やMA化との融和

マーケティング技術やMA化と融和しやすいのも、セールスイネーブルメントのメリットです。

これらのテクノロジーが発達したことでリード顧客の質と量は急速に高まりました。しかしそれを成約に導けるかどうかは別問題。営業活動がアナログであり、効率的に処理できない問題もありました。

しかしセールスイネーブルメントで営業力が確保されれば、マーケティング技術やMA化によるリード顧客の増加に対応できるようになります。

関連記事:マーケティングオートメーション(MA)の基本情報と導入方法を解説

セールスイネーブルメントを実現する方法

セールスイネーブルメントを実現する方法として、以下5つが挙げられます。

  1. 【前提】セールスイネーブルメントに必要なツールを用意する
  2. CRM/SFAツールで情報をストックする
  3. ノウハウのシェアによる業務標準化
  4. 担当者や部門をアサインする
  5. 施策を実行してPDCAサイクルを回す

それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。

【前提】セールスイネーブルメントツールを用意する

セールスイネーブルメントを実施するうえでは専用のツール導入がほぼ必須です。つまりCRMとSFAツールを利用しましょう。

CRMツールとは、顧客情報を一元的に管理して、営業部のパフォーマンスを向上させるためのサービス。SFAツールは案件管理やメール配信などを実施するためのもの。

これらを利用することにより、セールスイネーブルメントで欠かせない営業活動の数値化が実施できます。

ツールがない状態で壮大な営業活動の最適化は実施できません。かならずセールスイネーブルメントツールとともに取り組みをスタートさせましょう。

CRM/SFAツールで情報をストックする

CRMやSFAツールが用意できたら、利用方法を理解して情報をストックできるようにしましょう。セールスイネーブルメントを進めるうえではとにかく十分なデータを確保することが大切。

そのうえで改善すべき点と、継続するべきポイントを判別し、必要な施策を打ち出していきます。

とはいえCRMやSFAツールを導入した段階ではデータが登録されていないはずです。できるだけ早い段階で分析できるだけの材料を揃えておきましょう。

ノウハウのシェアによる業務標準化

セールスイネーブルメントのメリットのひとつに属人化解消が挙げられます。

つまり営業部の動きを業務標準化することが可能ですが、放っておいてはそのようには改善されません。

利用しているツールの共有システムなどを利用し、ノウハウやナレッジがシェアできるようにしましょう。誰しもが成功するためのポイントを踏襲できるように組織作りをするのは、セールスイネーブルメントを実現するうえで重要なポイントです。

担当者や部門をアサインする

セールスイネーブルメントを実施するなら、担当者や部門をアサインしましょう。この取り組みはあくまでも組織的なものであり、個人の努力で達成できるものではありません。最低でも複数の担当者チーム、できれば部門全体で長期的に取り組む必要があります。

できればセールスイネーブルメントの経験者やスペシャリストをアサインしたいところ。取り組みは遠大な計画になるので、信頼できる部署や人材を十分に用意しましょう。

施策を実行してPDCAサイクルを回す

体制が整ったら、施策を考案して実行しましょう。もちろんここでの施策は企業によって異なるものです。

教育が必要であれば、資料作成やインサイドセールスによる情報共有が足りていない場合もあります。自社で何が足りず、何をすべきなのかよく検討しましょう。

そして施策を実施したあとではPDCAサイクルを回し続けることが重要です。この繰り返しにより営業部門は高度化され、セールスイネーブルメントをより高いレベルで実現できます。

セールスイネーブルメントの成功事例

セールスイネーブルメントには、大手をはじめあらゆる業界で実施された事例があります。今回は特に学ぶべきところの多い事例について解説します。

  • トランス・コスモス株式会社
  • Sansan株式会社
  • 株式会社プレコフーズ

それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。

トランス・コスモス株式会社|営業スキル共有による業務標準化

出典:トランス・コスモス株式会社

セールスイネーブルメントの成功例としてトランス・コスモス株式会社の事例は頻繁に取り上げられます。

同社はSalesforceやKARTEなどのビジネス向けプラットフォームを販売。しかしこれらの商材は100種類ほど存在し、その中から顧客にフィットして最適な模索して提案する、というスタイルを取っていました。

しかし100種類もの商材を取り扱っていると営業提案のパターンは無限に存在し、そのナレッジ共有には常に悩みが尽きない状態。

同社はここでBtoB向けのセールスイネーブルメントツールを導入。これによりナレッジの共有・検索機能が強化され、営業パーソンが簡単に参照できるようになりました。

また動画型営業マニュアルとしても利用し、100種類ある商材の営業提案方法についてわかりやすく伝える教材としても運用されています。こういった工夫により、営業に対するトレーニングの時間も短縮され、生産性が高まった、とのことでした。

セールスイネーブルメントの強烈な効果に気づいた同社は、今後既存システムへの組み込み(RPA)や勉強会やセミナーなどのティーチングを用いて、ツールを社内により深く浸透させたいと語っています。

参考:100通りのサービスラインナップを日々提案⁉ 不可能を可能に変える「最強のデジタル提案書」とは

Sansan株式会社|採用力を3倍にアップ

出典:株式会社Sansan

セールスイネーブルメントにおいては、Sansan株式会社の事例も成功事例として有名です。同社は日本において、もっとも早くセールスイネーブルメントチームを立ち上げたことで知られます。

20名以上のスタッフと打ち合わせを重ね、営業セクションを「戦略・オペレーション・トレーニング・HRM」の4つに大別。ここで「そもそも人員が足りていない」という課題を抱えていました。

このようにしてセールスイネーブルメントで、今まで見えていなかった課題を発見しています。

至急、採用活動に移行し、合否基準の明確化や面接官トレーニングに乗り出します。そうすることで従来の8倍以上の頻度で、人材を獲得できるようになりました。

さらにはオンボーディングの必要性にも気が付き、同社は営業セクションから採用に至るまで、セールスイネーブルメントで合理化することに成功しています。

参考:「最強の営業組織」を創る!Sansan「セールス・イネーブルメント」による改革の全貌

株式会社プレコフーズ|史上初の新規顧客開拓数2.2倍を達成

出典:株式会社プレコフーズ

株式会社プレコフーズは食肉・海産品をメインに取り扱う商社。同社はSFAツールの導入によりセールスイネーブルメントを実現しました。

同社は全国5つの営業所を有しますが、各所で営業プロセスが異なっていました。また現場では属人化が起こっており、営業成績に安定感がない点を懸念したのです。

SFAツール導入後は、営業手法が一元的に管理されるように。さらにツール上の機能である「見込み客マップ」や「進捗確認システム」などが使えるようになりました。

すると新規顧客開拓数が前年の2.2倍を記録。これは株式会社プレコフーズ始まって以来の、快挙となる数値でした。

参考:前人未到となる年間目標の2.2倍の新規顧客開拓を実現したCRM/SFA活用法

セールスイネーブルメントを学ぶうえで役立つ書籍

セールスイネーブルメントを学ぶうえで、書籍を参考にするのも一つの方法です。

セールスイネーブルメントを体系的に学ぶ機会はさほど多くありません。以下で紹介する2冊は学習を進めるうえで役立ちますので、参考にしてみてください。

『セールスイネーブルメント・世界最先端の営業組織の作り方』

山下貴広の著書は、セールスイネーブルメントを進める際にかならず読んでおきたい書籍です。本人の多彩なイネーブルメント経験に基づき、施策の解説や具体的なアクションをわかりやすく解説しています。

  • 「どうすれば営業能力を平準化できるのだろう?」
  • 「どのように教育すべきなのだろうか?」
  • 「どうしても属人化してしまう」

こういった素朴かつ重大な疑問について適切に回答する頼れる一冊です。内容もさほど難解ではないので、入門書としてはこれ以上ない書籍だといえるでしょう。

『営業力を強化する世界最新のプラットフォーム セールスイネーブルメント』

ミラー・ハイマン・グループの最高経営責任者であるByron Matthewsによる著書です。matthews氏は数多くの世界的企業においてコンサルタントや部長を務めた人物。MicrosoftやSAMSUNGなどでの勤務経験もあり、世界でもっとも影響力のある営業パーソンです。

共著者は独テレコム社傘下でセールスイネーブルメントを主導していたtamara schenk氏。

両者の経験と知見に基づき、matthews氏が運用してきた手法を事例付きで解説したセールスイネーブルメントのガイドブックです。

【補足】セミナーに参加するのもおすすめ

セールスイネーブルメントを学ぶにあたり、セミナーへ参加するのもよいでしょう。決して数は多くありませんが、これをテーマとして講演を聞くチャンスはあります。

ただしセールスイネーブルメントのセミナーに参加する場合は、何らかのバックエンド商材が用意されているケースが大半。ややセミナー開催者の都合に合わせたアウトラインになりやすい点には注意しましょう。

セールスイネーブルメントで強い営業組織を作ろう

本記事ではセールスイネーブルメントについて詳しく解説しました。最後に重要なポイントをおさらいしておきましょう。

  • セールスイネーブルメントは営業活動の最適化を目指す取り組み
  • 実施することで営業活動を可視化して改善できる
  • セールスイネーブルメントを実施すれば、営業力向上や業務標準化が期待できる
  • マーケティング技術やMA化との融和などのメリットも豊富
  • セールスイネーブルメントを実現するにはツール導入がほぼ必須
  • ノウハウのシェアや営業パーソンの適切な評価も重要
  • セールスイネーブルメントにはすでに多数の成功事例がある

セールスイネーブルメントは複雑な施策に見えますが、本質的には営業活動の抜本的な効率化であり、シンプルな目的があります

コストとリソースが必要な取り組みですが、売り上げに直結する営業部のパフォーマンスを管理でき、向上させられるのは大きなポイントでしょう。

実際にセールスイネーブルメントは2018年ごろから急速に広まっているデータもあります。これは施策として有効であることの証左だといえるでしょう。

自社でもセールスイネーブルメントが実施できないか、検討してみることを推奨します。

投稿者プロフィール

樋口 裕貴
樋口 裕貴
1985年福岡生まれ
福岡発のインサイドセールス支援会社、soraプロジェクトの代表
スタートアップから外資大手まで700以上の営業支援プロジェクトの実績を持つ。
営業活動でお困りの会社様へターゲットリスト作成から見込み客育成、アポの獲得まで、新規開拓の実行支援が専門分野。