マクロ環境をPEST分析!戦略的に業界分析する方法

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業界分析する手法はいくつかあります。どの分析方法を選ぶかはマーケティング担当者の腕の見せどころです。せっかく情報を集めても、正しく分析して示唆にまでいたらなければ、分析を行った意味がありません。分析にはPEST分析がおすすめです。PEST分析なら市場機会をつかむことができます。この記事では、PEST分析による業界分析のやり方について解説します。

PEST分析はマクロ環境分析

マーケティングとは、施策の立案などすぐに数字に表れるものだけを指すのではありません。新事業の立ち上げや、新商品の開発などをするうえでは、業界環境の分析が不可欠です。ライバル会社の動向や、自社が属している業界に対する顧客のニーズなど、洞察すべきことがたくさんあります。自社にとってどのような機会があり、どのような脅威があるのかを正しく分析することが必要です。分析をして、初めて業界のどの位置に身を置き、何をすべきなのかが見えてきます。

特に中長期の業界動向を正確に分析することが、マーケティング担当者にとって重要な課題となります。一時的に成果が出ても、先細りの事業に取り組んでしまったのでは、屋台骨を揺るがす問題に発展しかねません。すぐに売り上げや利益の形で表に出なくても、大きな岐路に立ったときの意思決定を左右する材料になるのが業界分析の結果です。「どんな方法で分析するか」「分析結果からどのような示唆に至るか」という点が、事業に大きな影響を与えるので、決しておろそかにできません。

業界分析の手法はいくつかありますが、PEST分析はその中でもマクロ的な視野で業界分析する方法です。PEST分析という名前は、業界環境に影響をおよぼす4つの物事、政治(Politics/Political)、経済(Economy/Economical)、社会(Society/Social)、技術(Technology/Technological)、それぞれの頭文字にちなんでつけられました。3~5年程度の中長期の将来を見据えた分析を行うのがPEST分析の特徴といえます。Pは業界に対する規制など政治的な影響、Eは金利や為替の動き、市場の経済水準、Sは価値観の変化や流行、Tは業界や市場に直接影響を与える技術の進歩などです。これらについて個々に分析を行うだけでなく、分析結果を総合的に見て予測を行います。

目的は?

PEST分析はマクロ環境分析なので、環境分析としては最初に行うべきものです。基本的戦略も具体的戦略も、環境分析を行ったうえで策定するものですから、新規プロジェクトを始めるときには分析が終わっているのが望ましいといえます。そのため、業界が影響を受ける可能性がある変化が起きたときが、分析のタイミングになります。たとえば、業界を規制する法律が変わるとき、金利が大きく変動したとき、技術革新が起こったときなどです。政治、経済、社会、技術のいずれかに変化が起こるときがベストタイミングになります。実際に変化が起こってから分析をするというよりも、予測された段階で分析を始めると考えた方がよいでしょう。

PEST分析の結果に基づいて、さらに別の方法での分析を行ったり戦略を策定したりします。そのため、「どのタイミングでPEST分析に取り掛かるか」はとても重要なポイントです。良いタイミングで分析を始められればトレンドに乗れますが、タイミングを逸するとトレンドに乗り遅れることにもつながります。実際に変化が起こってから分析を始めたのでは、後手に回ることは避けられないので、仮説を立てたうえで、修正を加えながら分析を繰り返すことが必要になるでしょう。仮説による分析と、新たに得た情報を加えた分析との差を読み解くことで、より正確な示唆が行えるようになります。

具体例とコツ

PEST分析の利用例として、携帯電話業界を見てみましょう。携帯電話業界におけるPは通信法です。キャリアが認可制のため、海外の業者が参入しにくい業界という分析ができます。日本の携帯電話業界にとってのEは、日本の経済水準と考えてよいでしょう。比較的経済水準が高いので、ある程度大きな市場規模が見込めます。Sの面では、核家族化し個人を尊重する社会になっていたことが、個々に携帯電話を持つ環境をつくるのに有利に働いたといえそうです。最後にTですが、端末を小型化する技術や、バッテリーを長持ちさせる技術が携帯電話の普及に大きく貢献したことは間違いありません。このように見ると、PESTの4項目それぞれに分析していても、結果的に「業界をどう判断するか」は総合的な判断になっていることがわかるでしょう。

PEST分析を行ううえで、コツといえるものがいくつかあります。まず、仮説を立て、中長期的な将来を見据えて分析するという視点が必要です。条件を変えることで「どう変化するか」「変化しないのか」というシミュレーションを繰り返すことが必要になります。また、PESTの4事項を個別に捉えるのではなく、2つ、3つ、4つと掛け合わせた際に「どのような結果につながるのか」を分析することが大事です。1つの事項が変化しただけでは業界に影響がなくても、2つ以上の変化が同時に起こったときには大きな影響を被ることもあり得ます。

さらに、分析を行う際に重要なポイントとなるのが、「何が変わって何が変わらないのか」という視点です。なぜなら、「トレンドがどう変化するのか」という点がとても重要だからです。「変化が一時的なトレンドなのか」「中長期的な構造の変化なのか」「どれくらい変化が続くのか」といった見極めが、PEST分析を正確に行ううえでのコツになります。

なぜ最初に押さえておく必要があるのか?

PEST分析を最初に押さえておく理由は、PESTの分析結果が、その他の分析や戦略の策定を行う際の基礎になるからです。PEST分析には幅広く業界に影響を与えるものを網羅して分析を行うという特徴があります。そのため、PEST分析の時点で参入を見送るという判断も可能です。初期分析で見送りが決まれば、余分な分析をしたり、戦略を練ったりする必要がなくなります。

PEST分析は中長期的な分析ですから、日常的に行う分析ではありません。しかし、業界を取り巻くPESTのいずれかで「大きな変化があったとき」「新規事業を始めるとき」「新商品を開発するとき」などは、PEST分析のベストタイミングです。業界環境の変化をいち早く察知し、どの方向に進むべきかを判断できれば、トレンドをつかむきっかけになります。PEST分析を最初に押さえことで、企業が積極的に動くチャンスを見つけられることでしょう。
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投稿者プロフィール

樋口 裕貴
樋口 裕貴
1985年福岡生まれ
福岡発のインサイドセールス支援会社、soraプロジェクトの代表
スタートアップから外資大手まで700以上の営業支援プロジェクトの実績を持つ。
営業活動でお困りの会社様へターゲットリスト作成から見込み客育成、アポの獲得まで、新規開拓の実行支援が専門分野。