目次
サブスクリプション型サービスを展開している企業は、収益の安定化を望んでいることが多いものです。
SaaS事業は利用者数が増えるほど収益を増やせますが、解約するユーザーが増える可能性も高くなります。
このような場合、「ネガティブチャーン」を理解することで、収益を安定させることができます。
この記事では、ネガティブチャーンの詳細や計算方法、そして達成方法について詳しく解説します。
SaaS事業の効果的なビジネス戦略を見つけるための参考に、ぜひご覧ください。
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ネガティブチャーンとは
「ネガティブチャーン」とは、サービスの解約によって減少した収益額と既存顧客から得た新たな収益額を比較し、既存顧客からの収益額が上回った状態を指します。
既存顧客から得た新たな収益には、アップセルやクロスセルなどの単価向上の取り組みが関係しています。
アップセルとは、顧客単価を向上させる営業手法であり、クロスセルは商品のセット販売や単体での購入を勧めるセールス手法です。
例えば、展開するサブスクリプションサービスの解約によって50,000円の損失が出たとしても、既存顧客から100,000円のアップセルに成功すれば、ネガティブチャーンの状態となります。
そのため、ネガティブチャーンは、解約によって減少した収益額よりも既存顧客からの収益額が上回った状態であると理解しておきましょう。
ネガティブチャーンのチャーンレート
ネガティブチャーンの状態を確認するには、収益ベースでチャーンレートがマイナスになっているかを計算する必要があります。
チャーンレートとは、一定期間のうちにサービスを解約した顧客の割合のことです。
例えば、100人の既存顧客がいる場合、10人がサービスを解約した場合、チャーンレートは10%になります。
ネガティブチャーンのチャーンレートでは、サービスの解約によって減少した収益額と新たな収益額を合わせて計算します。
新たな収益額が減少した収益額を上回ることで、ネガティブチャーンの状態を引き起こすことが可能です。
ネガティブチャーンの必要性
SaaS事業において、ネガティブチャーンが必要な理由は、企業が抱える課題や実施すべき戦略を明確にするためです。
SaaS事業の拡大を図るためには、収益を増やす必要があります。
顧客の解約によって減少した収益額を補填するため、ネガティブチャーンを活用することで全体的な収益を計算することが可能です。
また、既存顧客の収益額増加に必要な戦略を立てながら、解約率の減少を課題として設定することができます。
新規顧客を獲得するよりもコストがかからないため、費用を抑えながら収益を維持する上で役に立つでしょう。
既存顧客の解約やダウングレードによる損失をカバーするためにも、ネガティブチャーンは重要な要素となっています。
チャーンレートの種類
チャーンレートの種類には、ネガティブチャーンの他に以下のものがあります。
- カスタマーチャーンレート
- グロスレベニューチャーンレート
- ネットレベニューチャーンレート
カスタマーチャーンレートとは、一定期間中に解約した顧客の割合を指します。
この割合を理解することで、一定期間中の解約率を把握し、収益予測を立てることができます。
グロスレベニューチャーンレートは、レベニューチャーンレートの一種で、解約やダウングレードによる損失額を算出します。
また、ネットレベニューチャーンレートもレベニューチャーンレートの一種であり、損失額と増加した収益額を算出します。
ネットレベニューチャーンレートの算出結果から、マイナスの数値になる状態がネガティブチャーンとなります。
ネガティブチャーンの計算方法
ネガティブチャーンのチャーンレートを計算するときは、ネットレベニューチャーンレートによって計算します。
使用するのは以下の計算式です。
当月の解約によって発生したMRR-当月のExpansion MRR÷ 先月末時点のMRR×100 |
MRR(Monthly Recurring Revenue)とは、展開するサービスによって毎月得られる収益のことです。
Expansion MRRは、既存の顧客が上位プランにアップグレードした場合のMRRを指します。
例えば、SaaS事業を展開する企業が、サービスの解約によって得たMRRが5万円であり、アップセル・クロスセルによって得たMRRが10万円で、先月末時点のMRRが30万円だった場合、以下のように計算されます。
5-10÷30×100=-16% |
上記の計算式の結果がマイナスの場合、ネガティブチャーンの状態にあることがわかります。
ネガティブチャーンを達成するためには、以下を理解しておく必要があります。
- Expansion MRRをアップセルやクロスセルによって増やす
- 解約によるMRRを上回る
ネガティブチャーンの追跡方法
ネガティブチャーンの数値を追跡する場合、日々の解約数によって減少した収益額や新たに得た収益額などをまとめる必要があります。
このようなデータをまとめるにはシートを用意する必要がありますが、この作業には担当者に負担がかかります。
そのようなときには、カスタマーサクセスツールの導入がおすすめです。
カスタマーサクセスツールとは、顧客の活動情報を可視化してまとめたものです。
日々のチャーンを追跡し、時間の経過による変化をチェックできるので、作業効率が向上します。
分析結果からネガティブチャーンの原因を特定することもできるため、適切な改善を行うためにはカスタマーサクセスツールを導入しましょう。
ネガティブチャーンの達成方法
ネガティブチャーンを達成するには、以下の方法を意識しましょう。
- 解約率を減らす
- MRRを増やす
- 既存顧客を育成する
- オプションの有料化をおこなう
それでは順番に解説します。
解約率を減らす
ネガティブチャーンの状態にするには、解約率を減らす必要があります。
解約やダウングレードによる損失額を少なくすることで、既存顧客から補填する額を減らせるからです。
既存顧客の解約率を減らすためには、サービスの品質向上や料金プランの見直しなどが最適です。
実際にサービスを利用した顧客からのアンケートを集めることで、改善すべきポイントを見つけられます。
解約率を減らすための調査を実施し、最適な改善策を実行しましょう。
MRRを増やす
ネガティブチャーンを回避するには、解約率を減らし、MRR(サービスから毎月得られる収益)を増やすことが重要です。
MRRを増やすためには、以下の方法があります。
- 既存顧客にアップグレードプランを提案する
- 既存顧客にSaaSサービスへのアカウント追加をサポートする
- サービス機能を拡張する
これらの施策を実行することで、既存顧客のMRRを増やすことが可能です。
ユーザーの視点に立ち、彼らが何を求めているかを考えるようにしましょう。
既存顧客を育成する
既存顧客からの収益を増やすには、ロイヤルカスタマーの育成が必要です。
ロイヤルカスタマーとは、企業やブランドに強い信頼を持っている顧客のことです。
このような顧客は、「この企業なら信頼して利用できる」という強い意識を持っているため、解約をするリスクが少ないという特徴があります。
ロイヤルカスタマーが多いほど、安定した収益につながるため、顧客満足度を上げる施策が必要です。
また、ロイヤルティが高い顧客の中には、自ら情報発信してくれるユーザーもいるため、企業側が手間をかけずに新規顧客を増やすことができます。
既存顧客を育成する際は、メルマガや自社ブログ、SNSなどを通じてコミュニケーションを取るようにしましょう。
オプションの有料化をおこなう
現在提供しているサービスのオプションを有料化することで、MRRを増やすことが可能です。
ただし、途中からオプションを有料化すると、既存顧客から抵抗感が生まれる可能性があります。
その結果、解約やダウングレードの割合が高くなり、解約率を上げるリスクが高まります。
オプションを有料化する場合は、追加サービスやサポートの追加などによって付加価値を提供することが必須です。
また、既存顧客が納得するための材料を用意しておきましょう。
ネガティブチャーンの達成を目指すメリット
ネガティブチャーンの達成を目指すことで、以下のような2つのメリットがあります。
- ロイヤルカスタマー率の増加
- 収益の安定化
それでは順番に解説します。
ロイヤルカスタマー率の増加
ネガティブチャーンを達成すれば、既存の顧客を育成でき、ロイヤルカスタマーの増加につながります。
ロイヤルカスタマーが増えると、展開するサービスのアップグレードや追加オプションの購入を促してくれます。
その結果、解約による損失額よりも新たな収益額を増やすことができ、SaaS事業の利益向上が可能です。
サブスクリプションサービスを展開する企業にとって、ロイヤルカスタマー率の増加は大きなメリットです。
収益の安定化
ネガティブチャーンを導入することで、収益を安定化することができるメリットがあります。
新規顧客を獲得するためにはコストがかかりますが、ネガティブチャーンは既存顧客による収益増加が見込めます。
中長期的な顧客を獲得できるため、ネガティブチャーンを達成すれば安定した収益を獲得することが可能です。
自社のサービスに愛着を持っている顧客を増やせるため、新規顧客を増やさずに収益を安定化させることができます。
ビジネスにおいて収益を安定化させることは重要です。そのため、ネガティブチャーンは企業にとって有益なメリットの1つと言えます。
ネガティブチャーンの注意点
ネガティブチャーンを達成する上では、解約率の低下や収益額の増加を目指す取り組みが必要ですが、強引な施策には注意すべきです。
例えば、手数料が発生する解約やオプションを有料化することは、既存顧客から反発を受ける可能性があります。
企業としての信頼を失うことにもつながるので、ネガティブチャーンの達成にこだわることは避けるべきです。
ネガティブチャーンは理想的な目標であり、顧客のことを第一に考えた取り組みを行うことが重要です。
ネガティブチャーンでSaaS事業を安定化させましょう
ネガティブチャーンによる指標を作ることで、既存顧客の解約率低下や収益の増加をおこなう戦略を立てられます。
SaaS事業を手掛ける企業にとって継続的な収益を得ることは重要なため、ネガティブチャーンをうまく活用しましょう。
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投稿者プロフィール
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1985年福岡生まれ
福岡発のインサイドセールス支援会社、soraプロジェクトの代表
スタートアップから外資大手まで700以上の営業支援プロジェクトの実績を持つ。
営業活動でお困りの会社様に
ターゲットリスト作成から見込み客育成、アポの獲得まで、新規開拓の実行支援が専門分野。
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