目次
すべてのビジネスと営業活動において、基本となるインサイドセールス。
しかしうまく成果を上げられず、悩んでいる担当者も多いのではないでしょうか?
そこで本記事では戦略・運用・アフターフォロー3つの観点から、インサイドセールスのパフォーマンスを改善する方法・コツについて解説します。
合わせてインサイドセールスそのものに対する基本的な考え方やマインドセットについて触れているので、ぜひ参考にしてください。
そもそもインサイドセールスとは? 「営業」であることを忘れないのがコツになる
インサイドセールスは、インターネットの普及と高度化されたWeb技術を背景に、米国で生まれた新しい営業手法です。
顧客を直接訪問することなく電話やメールでコンタクトを行うため、移動コストがかからず対応案件数を増やせることから日本でも採用する企業が増えています。
しかし、「電話やメールでアプローチする営業手法」という情報だけでインサイドセールスを始めてしまうと、見込み客リストの上から順番に電話をしたり、同じ文章の営業メールをリストに一括送信したりしてしまいがちです。
結果として成果が出ず、新しいやり方は、ウチの社風になじまなかったのだとインサイドセールスそのものをあきらめてしまうことになりかねません。
ここで、今までの営業スタイルについて振り返ってみましょう。従来の訪問型の営業活動では客先ごとに提案する内容や持っていく資料を変えていませんか?
その提案や資料は、客先の業種や業態、これまでの訪問回数や購入実績などから適切だと思われるものを選んだり作ったりしているはずです。
初めてコンタクトする企業に、いきなり細かな技術仕様がびっしり書かれた提案書は提出しないでしょうし、すでに具体的な課題を把握している相手に、製品カタログだけを持っていくということもないでしょう。
インサイドセールスも考え方は同じです。従来型の営業では顧客との直接コミュニケーションから得た情報や、営業マンが個々に持っている知識や経験といったスキルによって、資料選定や課題提案を実施していました。
インサイドセールスでは見込み客の購買までの筋書き(購買プロセス)を想定し、見込み客がプロセスのどの段階にいて、どのような購入マインドを持っているのかを推し量りながら電話やメールで行っているのです。
では、次のトピックからインサイドセールスの戦略(計画)と運用に分けて手法とコツを説明していきます。
インサイドセールスのコツ【戦略面】
インサイドセールスでは、まず戦略面から意識すべき2つのコツがあります。
- BtoBの購買プロセスから、購入者のマインドを考える
- 顧客活動の「見える化」を図る
インサイドセールスにおいては、購入者のマインドを知るためにマーケティング理論が確立されています。まずはこれを軸として、顧客の考えていることが何か推測できるようにしましょう。
そしてそのあとで、顧客活動をみえるようにして、適切な手段が取れるようなスキームに乗せることが大切です。
BtoBの購買プロセスから購入者のマインドを考える
BtoB商材は個人消費とは異なり企業が組織として購入するため、予算申請が必ずあります。
予算の承認を得るには、意思決定者を納得させる根拠が必要です。商材の導入担当者(もしくはチーム)は発注に至るまでに下記のような長い購買プロセスに基づいて行動を起こします。
最近では、購買プロセスに基づく見込み客の行動や思考をカスタマージャーニーと呼ぶようになりました。これはマーケティングにおける基本理論であり、以下のようなステップによって構成されます。
- 自社課題の認識
- 課題解決に必要な機能要件のまとめ
- 要件を満たす商材(または候補事業者)の調査・選定
- 企業に問い合わせて提案依頼や見積もり請求
- 社内で要件との適合性を評価・検討
- 社内稟議と意思決定
1〜3の段階で、導入担当者(潜在的見込み客)は課題や課題を解決するソリューションの知識を得るべく、さまざまなアクションを実施します。
Webサイトを頻繁に訪れたり、Webセミナーに参加したり、ソリューション比較サイトで資料請求したりするでしょう。
もう少し進んだ段階であれば、トライアル版を申し込むこともあるでしょう。これらの行動はほとんどWebで行われます。
導入担当者は、「組織の課題を解決できるソリューションかどうか」について明確な目的を持ちながら調査しているので、インサイドセールス側はこの目的に沿った営業提案書や資料を用意する必要があります。
顧客活動の「見える化」でチャンスを見出す
前述の通り、見込み客は導入検討のための調査をほとんどWebで行います。そのため、なるべく早い段階で顧客情報(メールアドレスや電話番号、会社名などの個人情報)を把握しないと、ステルスで購買プロセスが進む懸念があります。
問い合わせがあった時には購入の意思決定がほぼ終わっていて営業提案を実施する余地が残らないわけです。そもそも、選定から外れている場合は問い合わせすらありません。
インサイドセールスは最低でも見込み客のメールアドレスがわかっていないと活動ができません。いくら、競合商材に対する強みがあっても伝えるタイミングがないのです。そこで、見込み客の個人情報と検討段階を把握するWebの仕組みが必要になります。
具体的には資料ダウンロードやトライアル申請、見積もり請求のWebフォームです。メールアドレスや電話番号、会社名といった情報を入力してもらうと同時に、請求した資料やコンテンツの内容によって、見込み客の課題を把握し購買プロセスのどの段階にいるのかを推測できるようになります。
Webフォームで得た情報はCRM/SFAで顧客情報に紐付けて登録・閲覧できるようにすることを強くおすすめします。見込み客の企業名や所属といった個人情報とどの資料をいつ請求したのかといった行動情報を紐付けするわけです。
インサイドセールスのチームメンバーに可視化・共有すれることで、適切な営業提案がしやすくなり、結果として案件化率も高まるでしょう。
Webフォームの設置はマーケティング部が担当していて、自由にならないという社内事情を抱えている場合もあります。
しかしインサイドセールスで成功するにはマーケティング施策で得た情報が不可欠です。インサイドセールス部門を率いるマネージャーはマーケティング部門と協業できる環境を整備するのが、優先されるミッションだと言えるでしょう。
インサイドセールスのコツ【運用面】
インサイドセールスでもっとも重要なのは運用におけるフェーズ。ここでは以下5つのコツに注意しましょう。
- 顧客の課題と購入マインドごとに商材資料を用意する
- トークスクリプトを作る
- 正しくメールが送信されているか管理する
- 話すよりも相手に話してもらう
- 簡単に記録できる仕組みを構築する
運用面での施策の過不足は、インサイドセールス・フィールドセールスにおける成果を大きく左右します。ここは特に力を入れて問題解決できるようにしましょう。
顧客の課題と購入マインドごとに商材資料を用意
インサイドセールスは電話やメールで営業提案を行いますが、その時の提案書は課題ごとに複数用意しておくと成果に繋がりやすくなります。
見込み客の課題や導入検討調査で得たい情報はさまざまあるでしょう。
どの企業にも受注につながりやすい提案パターンというものがいくつか存在します。そのパターンの中から見込み客に共通している課題を類推し、課題ごとの提案書を作成するというのが、定番の方法です。
もともと、成功パターンから抽出した課題なので成約率が高くなりますし、同じ課題を持った見込み客にアプローチする際に使いまわしができるので効率的です。これをインサイドセールスチーム全体で実施することで、指数関数的にナレッジが溜まりさらに精度が増すという良い循環ができあがります。
トークスクリプトを作る
トークスクリプトは営業トークを台本化し、チームメンバー間のトークスキルを均質化するものです。
テレアポ業務でも作られますが、インサイドセールスのトークスクリプトは、見込み客の購入マインドを後押し、質の高いリードに育成(リードナーチャリング)にするという目的を含んでいます。
したがって見込み客の組織内の状況や課題、要望、ステークホルダといった情報を聞き出せるような質問集のようなスクリプトが使いやすいと言えるでしょう。
また、ヒアリングした内容は項目ごとにまとめて入力できる、ヒアリングシートをCRM/SFA内に用意しておくことをおすすめします。項目ごとにしっかりとデータ化することで、改善点や成功パターンを見つけることにつなげることが可能です。
メールを送ったのに返信がない?でも、そのメール本当に届いていますか?
メールを使った詐欺やなりすましといった迷惑行為が横行しているため防衛手段として、さまざまな機能がメールソフト側に実装されるようになりました。BtoBの場合は更に厳しいスパムフィルタが設けられていることも。
そのため、メール送信側でのセキュリティ設定が甘いと担当者の受信ボックスにメールが届く前に、メール受信サーバーでブロックされることが多々あります。これでは自社からのアプローチは、そもそも見込み客に認識すらされません。
また、受信サーバーを突破したとしても受信者にとってあまり興味のない件名や送信元の表示の場合、開封されないまま削除されたり、メールソフトのアルゴリズムによって自動的に低優先ボックスに送り込まれたりしてしまいます。
これらを防ぐには、メール送信設定をしっかりと行い差出人名の表示や件名についても配慮する必要があります。具体的にはDNSにメール送信サーバーをSPFレコードとして登録し、メール送信時にはDKIMで暗号化するといった対策を行います。
これは情報システム部門のエンジニアに依頼して実施してもらう必要があるでしょう。差出人や件名の表示は、メール送信時に設定できますので組織内で共通認識のもとにルールを決めてください。
話すよりも話してもらう
インサイドセールスにおいてはテレアポが基本戦略となります。ここでは「話すよりも話してもらう」という方向性とマインドを持ってみましょう。
テレアポで成果を上げるために必要なポイントはふたつ。一つは「相手に電話を切られないこと」、もうひとつは「話を聞いてニーズを掴み取ること」。この両方をクリアするうえで大切なのが、「話すよりも話してもらう」という姿勢です。
もちろんこちらから最低限のイントロダクションは必要ですが、できるだけ相手に質問して話をさせるようにしましょう。そうすることでむしろ相手がこちらをアドバイザーとして求めるような状況を作り出し、テレアポ特有の営業色を緩和することが可能です。
また話せば話すほど、「相手の求めるニーズが落ちてきやすい」という点も重要。架電リストに載っていない情報を聞き出すことで、より適切な営業提案ができるようになります。
アポの設定回数が高まるのはもちろんのこと、その事前情報が実際の商談でも切り札となるかもしれません。
簡単に記録できる仕組みを構築する
インサイドセールスでは、より多くのリードを獲得することが重要。そしてそのうえで「リードからできるだけ多くの情報を取得する」というのも大切です。
情報としてまとめるには、簡単に記録できる仕組みを構築する日宇町があります。
なぜなら情報が整理されず、「結局何がリードに起こっているのか把握できない」「記入すべき情報が欠落している」といったこともあるからです。
フィールドセールスでは正確な情報と、適切な深度の考察が欠かせません。つまり情報が整理されず雑多な状況を作りしていては、インサイドセールスが商談を邪魔しているようなものです。
情報を整理するため、SFAツールなどの導入も検討しましょう。これはインサイドセールスにおいて得られた情報を入力しやすく、もしくは閲覧しやすいように設計された記録支援ツールです。
こういったものを導入することでインサイドセールスの段階で得られる情報量やその品質を高めて、フィールドセールスにかなり有力な情報が受け渡せるようになります。
単なる記録といっても、甘くみてはいけません。より高度な営業戦略を立案するためにも、ツールなどを使って簡単に記録できるよう体制を構築しましょう。
インサイドセールスのコツ【アフターフォロー面】
インサイドセールスは、戦略・運用だけですべてではありません。商談が終わってからも取り組むべき施策がいくつかあります。
特に以下3点はビジネスを持続的に発展させるうえで重要なポイント。
- 受注/失注の要因を把握して改善点を見つける
- 失注案件は受注の卵。そのまま放っておかない
- メンバーの活躍を視覚化して、しっかり報奨する
受注できたなら、今後もそれを継続しましょう。失注したからといって、落ち込む必要はありません。その事実から受注を増やす貴重なヒントが得られるからです、
それぞれについて詳しく解説するので、参考にしてください。
受注/失注の要因を把握して改善点を見つける
最初に、受注と失注それぞれの要因を把握しておきましょう。
CRM/SFAによる顧客情報や活動履歴、提案資料やトークスクリプトの共有によるスキルの均質化により、インサイドセールスはチームで行うほうが有利だとされています。一方で一度成果が出ると、同じ提案資料やトークスクリプトを繰り返して使いがちです。
しかし、同じパターンの繰り返しだけでは徐々に成長曲線は鈍化してしまいます。これを防いで成長を続けるためには、新しい成功パターンを見つけることが大切ですが、そのヒントは受注/失注の要因を分析することで見つけられます。
常に何が成功したのか、なぜ失注したのかをチームで分析し、課題が見つかったら提案資料やトークスクリプトを改善することで、成果を出し続ける組織の実現へとつながります、
失注案件は受注へのステップ。そのまま放っておかない
失注案件は、短期的には提案資料やトークスクリプトの改善ポイントを見つけられるという利点があり、中期的には復活受注の可能性を含んでいるものです。ある調査によれば、失注案件の8割が2年以内に競合の商品を購入するという結果が出たそうです。
失注案件はそのまま放置せず、ニュースレターを送り続けたり、半年後1年後に再コンタクトを試みたりするなどして顧客との関係をキープし続けましょう。失注すなわちビジネス活動の失敗、という間違った結び付けだけは避けましょう。
メンバーの活躍を視覚化して、しっかり報奨する
営業の成果というとどうしても売上金額や成約率が目立ちますが、インサイドセールスの成果は受注に至る過程の案件化数(率)も重要な指標です。しかし中間指標というのは、期間ごとの業績レポートなどには反映されないせいか、社内で可視化されることがあまりありません。
人のやる気や仕事へのモチベーションは目標を達成し、報奨されることで維持できますので、インサイドセールス部門の目標を明確に設定し、達成までどのくらいなのか進捗を可視化してください。そして目標を達成したら報奨するという制度や習慣を取り入れていく必要があるでしょう。
まとめ:インサイドセールスでは各フェーズのコツをおさえることが大切
本記事ではインサイドセールスを成功させるため、戦略・運用・アフターフォロー3つのフェーズにおいて重要なコツを解説しました。最後にもう一度重要な部分をおさらいしておきましょう。
<戦略面>
- BtoBの購買プロセスから、購入者のマインドを考える
- 顧客活動の「見える化」を図る
<運用面>
- 顧客の課題と購入マインドごとに商材資料を用意する
- トークスクリプトを作る
- 正しくメールが送信されているか管理する
- 話すよりも相手に話してもらう
- 簡単に記録できる仕組みを構築する
<アフターフォロー面>
- 受注/失注の要因を把握して改善点を見つける
- 失注案件は受注の卵。そのまま放っておかない
- メンバーの活躍を視覚化して、しっかり報奨する
近年ではインサイドセールスが複雑化して、戦略や運用、アフターフォローに至るまで相当な創意工夫が求められるようになりました。
もちろんフィールドセールスも同様です。
しかしインサイドセールフスの整備がいい加減だと正しい支援を受けられず、結果としてビジネスは「商談止まり」になりがち。
本記事では紹介した内容を参考に、インサイドセールスが適切に顧客のニーズを察知して情報共有できるようにしましょう。
またフィールドセールスにおける商談が成立しなかった場合でも、改善策を探って敵機的に振り返ることも大切です。
投稿者プロフィール
-
1985年福岡生まれ
福岡発のインサイドセールス支援会社、soraプロジェクトの代表
スタートアップから外資大手まで700以上の営業支援プロジェクトの実績を持つ。
営業活動でお困りの会社様に
ターゲットリスト作成から見込み客育成、アポの獲得まで、新規開拓の実行支援が専門分野。
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