営業活動を効率化するインサイドセールスとそのポイントとは

この記事を読むのに要する時間:約 < 1

営業活動のスタイルは「フィールドセールス」中心から、「インサイドセールス」へと移り変わっているといわれています。営業やマーケティングに携わっている方なら、この「インサイドセールス」という言葉は耳にしたことがあるでしょう。

今回は「インサイドセールス」の概要から、営業活動にインサイドセールスをより役立てるポイントや、成果につながるインサイドセールスの事例などについてご紹介します。

インサイドセールスとは

1.インサイドセールスとは何か

インサイドセールスとは、営業活動で主体とされてきた「外勤営業(フィールドセールス)」に対して、「内勤営業」を指す言葉です。フィールドセールスとは、営業先の企業や店舗を実際に訪ねて受注を取ることで販売を行う営業活動です。それとは異なり、社内で電話やインターネットを経由して受注を取り販売を行う営業活動、つまり非対面の社内営業がインサイドセールスと考えると分かりやすいでしょう。

インサイドセールスの具体的な業務内容には、「電話・メールでの営業」「チャットでの顧客対応」「WEB会議などによる打ち合わせ」「ダイレクトメールの送付」「お問い合わせへの対応」などが挙げられます。これらのように、社内で完結させられる営業活動によって、実際の販売契約につなげることがインサイドセールスにおける、おもな業務です。

2.インサイドセールスの歴史

インサイドセールスは、外回り中心の営業に代わる新しい販売活動の形として、1950年代にアメリカで発祥したといわれています。アメリカは広大な国土を持っており、人の足や交通機関で実際に顧客先すべてを回ることには限界がありました。そのため、直接訪問をともなわずに商品やサービスの販売を行う手段として、電話や郵送などによる営業活動が広まったことが始まりといわれています。

当初インサイドセールスでは、個人顧客を対象とした低価格商品が主に動いていました。しかし、その普及とともに企業間取引による高額な取引などにもインサイドセールスが活用されるようになりました。

3.インサイドセールスとテレアポの違い

インサイドセールスとは、電話やメール、チャットなどを活用した顧客とのやり取りから、ダイレクトメールの送付やWEB打ち合わせなど、内勤でできる営業活動の全般を指します。

その一方でテレアポは「テレフォン・アポイントメント」という正式名称が示すように、顧客に電話をかけることで対面のアポイントメント(アポ)を取る活動に特化した呼び名です。

また、インサイドセールスの場合は、基本的に既存顧客もしくは既に1度接触している相手先がターゲットとなることが主体です。

一方テレアポの場合は、新規の見込み客に電話をかける場合が中心で、未接触の相手先がおもなターゲットとなります。

このようなターゲット顧客の違いもあります。

インサイドセールスが注目される理由

インサイドセールスはおよそ60年超の歴史がある営業手段ですが、21世紀の現代において今なお注目度が増し、ニーズが高まっています。

ここでは、インサイドセールスが現代で注目される理由についてご紹介します。

1.慢性化する人材不足と求められる効率化

フィールドセールスはある意味「人海戦術」とも呼べる方法で、可能な限り多くのスタッフを用いて多数の相手先を訪問することで成り立っている側面があります。しかし、現代においては人手不足が深刻な問題となっており、フィールドセールスに駆り出せる人材にも限りがある状況になっています。

現代の企業では少ないスタッフでできるだけ効率よく販売を行うことが求められ、今後も継続的にその傾向が見込まれるでしょう。そのため、限られた人材と少ない動きで効率よく結果を出せる可能性があるインサイドセールスの需要が高まっていると考えられます。

2.売上アップの施策が限られている

20世紀の高度経済成長期を振り返ると、これまでになかった新しいものをどんどん生み出すことで、爆発的な売上をたたき出すという手法が主に取り入れられてきました。ところが、現代では人の暮らしに必要とされるものはほぼ人の手に行き届き、娯楽の手段なども飽和状態となっています。そのため、企業が売上をあげるために採れる施策も限定的になってきています。「多くのものを人の手に渡す営業」から「顧客に積極的に選ばれる営業」に、販売活動の形も移り変わったため、スピーディで質の高いアプローチが必要になりました。

プッシュすべき顧客を割り出し、確実に生産性を高める手段として、インサイドセールスが見直されていることが分かります。

インサイドセールスのポイント

ここでは、企業がインサイドセールスに取り組む際に、より業務を効率的に行って確実に成果をあげるためのポイントについて、ご紹介します。

1.KPIの設定

インサイドセールスは、比較的手堅く信ぴょう性の高いKPI設定が可能といわれています。企業内で設定するKPIにおいては、設定の根拠が用意しにくく説得力を欠いてしまうことも少なくありません。しかし、インサイドセールスを行う過程ではさまざまなデータが得られるため、それらを活用することで信頼性の高いKPIの設定ができます。

インサイドセールスにおいてKPIを設定する際には、まず現在までの実績を踏まえ、その傾向に基づいた改善ポイントを洗い出します。それを基に改善のための施策を打ち、それら一連のPDCAサイクルを回していくことで、確実性の高い目標値を割り出すことが可能となります。

2.チーム作り

インサイドセールスチームを作る際には、メンバーそれぞれが全ての業務に携わって順序通りに作業を進めるよりは、各メンバーにそれぞれ特化した役割を与えると良いでしょう。分業体制を前提にチーム体制を構築することが、効率的なインサイドセールス活動につながります。

実際のところ、インサイドセールスにかかわる業務はかなり多岐にわたり、それらを1スタッフが順序に沿って延々と進めることには限界があります。チーム単位で「インサイドセールス活動で何を成し遂げるかをまず意識しながら」、それに沿って各メンバーに個々の役割を与えていくという組織作りが重要になります。

役割分担の一例として、以下のように個々に明確な役割を付けるなどの手段が有効です。

・リードを獲るために施策を整えるメンバー

・見込み顧客を割り出し、その優先順位を付けていくメンバー

・リードを受注につなげるために引き渡すメンバー

3.効果的な取り組み方

インサイドセールスによる営業活動でより効果を上げるためには、以下のような取り組みが有用です。

【フィールドセールスとの分業体制による組み合わせ】

インサイドセールスだけに頼るのではなく、外回りを行うフィールドセールスと効率よく分業して見込み客の受注につなげる方法です。

インサイドセールスとフィールドセールスは常に情報を共有し、「インサイドセールスがここまで話を進めたらフィールドセールスへバトンタッチ」と決めておきます。営業や販売は、顧客との信頼関係をあらかじめある程度まで構築しておくことで一気に業務が進展するものです。インサイドセールスが顧客とのコネクションを築いておき、手応えが得られたところでフィールドセールスに回すという手段は有効でしょう。

もちろん成果が得られたら、フィールドセールスは必ずインサイドセールス側に連携してフィードバックするようにしておきます。

【営業フローを作り、それを共有して業務を行う】

フィールドセールスでも営業フローが重要視されますが、インサイドセールスにおいてもそれは変わりません。体系化したものを必ず文書などで可視化して、すべてのメンバーが常にその過程を意識できるようにしましょう。

また、営業フローは1度作って完結ではなく、各メンバーが得た成果やノウハウを随時落とし込むことが大切です。

4.メンバーのメンタルケア

リードが獲得できなかったり、断られ続けている相手先に何度もアプローチが必要になったりすることにより、インサイドセールスがつらいと感じてしまうメンバーも少なくないでしょう。

もし、インサイドセールス業務において誰かがメンタル面で不調を感じる事態になった場合、メンバー個人の問題ではなく組織全体の問題と考える必要があります。該当のメンバーに対してメンタルケアを実施することと同時に、それを引き起こした業務上の問題点を掘り起こさなければなりません。

たとえば、リードが獲得できないことにはマーケティングとの連携不足が関係しているかもしれませんし、KPIの未達成が続いているのなら目標設定自体に問題があるかもしれません。

インサイドセールスの事例

ここでは、インサイドセールスを活用して大きな成果を出した事例や、インサイドセールスに向くケースと不向きなケースなどについてご紹介します。

1.インサイドセールスの活用事例

「営業は自分の足で受注を取るもの」という考え方で、すべての相手先に対して初回のヒアリングから直接対面の形でフィールドセールスを行ってきた、ある企業のケースです。

各営業担当の業務の質は良く、受注率は高いものの近年の人手不足が影響し、受注数そのものが減少傾向にありました。

そこで思い切って、ヒアリングから受注までを内勤営業が行う体制に変更。そこで分かったのは、受注減の原因には人手が足りないことに加えフィールドセールス一辺倒では移動時間による業務時間の圧迫があったことでした。

メンバーが業務時間のほとんどを営業活動に割けるようになったことで、1日あたりの相手先とのコンタクトが2倍以上に増加。また受注数もフィールドセールス時代の300%を記録するなど、業績の飛躍的な向上にインサイドセールスを役立てることができました。

2.インサイドセールスが向いているケース

インサイドセールスは営業活動の効率化に役立ちますが、すべてのケースで成果につながるとは言い切れない面もあります。インサイドセールスが向いているのは、「製品・サービスの単価が比較的低く、営業の説明が容易に済むケース」といえます。

「単価が低く説明などが複雑になるケース」もどちらかといえばインサイドセールス向きですが、顧客の理解を求めるためにフィールドセールスを併用する必要性が出てくることもあります。

具体的には、近年急速に普及しているクラウドを活用したサービスや、サブスクリプション型のサービスなどは、特にインサイドセールス向きビジネスモデルといえます。

3.インサイドセールスに不向きなケース

インサイドセールスが向いていないケースとしては、先の項目でご紹介した例と正反対にあたる「製品・サービスが高価で説明も難しいケース」です。何度も対面し、信頼関係を築くことで受注をあげられるという側面が大きく、顧客との接触が少ないインサイドセールスは分が良くありません。

「高価だが、説明が容易なケース」なら、ある段階まではインサイドセールスを用いて、受注の見込みがあればフィールドセールスに切り替える手段が向いているでしょう。

インサイドセールスの導入方法

1.自社で構築する方法

自社でチーム体制を作り、これまでの営業活動で得られたデータを分析・共有しながらインサイドセールスの基礎を1から作っていく方法です。

数多くの人員がそろっていて、時間をかけてじっくり体制を完成に導ける余裕がある場合には、初期コストを抑えられるため有効です。その反面、早期に成果をあげたい場合や人材が足りない状況である場合にはあまり向いていません。

2.既存の営業ツールや顧客管理ツールを活用する方法

一般的に「SFA」、「CRM」などと呼ばれる営業ツールや顧客管理ツールを導入し、それを活用してデータを得ながらインサイドセールスの基盤を作っていく方法です。ツールの導入に初期コストはかかりますがそれほど高額ではないため、人員は足りていてコストを抑えつつほどほどのスピードで成果をあげたい場合に有用でしょう。

3.アウトソーシングする方法

とにかく営業活動にこれ以上人手を割くことが難しいという場合には、インサイドセールス業務そのものをプロの業者に外注(アウトソーシング)するという方法もあります。導入の初期コストや維持費はある程度かかりますが、できるだけ早期に成果をあげたい場合や自社のフィールドセールス部門と連携して分業体制をすぐ作りたい場合に有効です。

まとめ

今回は、「インサイドセールス(内勤営業)」という業務の概要や歴史に加え、インサイドセールス業務を成果につなげるポイントや導入方法などについてご紹介しました。

インサイドセールスの仕組みを整え、早急に成果をあげたいが人員やコストを割く余裕がない、あるいはフィールドセールスの人材を減らしたくないとお悩みではありませんか? そのような場合は、インサイドセールス部門をアウトソーシングによってスピーディに構築し、さらなる業務効率化を図るという手段もあります。自社のニーズや目的に沿った、最適なインサイドセールス体制の構築をぜひご検討ください。

投稿者プロフィール

樋口 裕貴
樋口 裕貴
1985年福岡生まれ
福岡発のインサイドセールス支援会社、soraプロジェクトの代表
スタートアップから外資大手まで700以上の営業支援プロジェクトの実績を持つ。
営業活動でお困りの会社様へターゲットリスト作成から見込み客育成、アポの獲得まで、新規開拓の実行支援が専門分野。