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見込み客に適切なタイミングで接触を図り、質の高いリードに育てる「リードナーチャリング」はインサイドセールスの基本的なマーケティング活動です。
しかし、いまひとつリードナーチャリングがわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事ではリードナーチャリングの基本と手法を解説します。
リードナーチャリングを理解して、自社の営業活動に活用しましょう。
リードナーチャリングとは
リードナーチャリング(Lead nurturing)とは「見込み客の育成」を意味します。
自社の商品や製品、サービスであるプロダクトに対して関心を示した見込み客へ向けて、そのプロダクトをより理解してもらい購買意欲を育成するマーケティング施策の1つです。
育成対象はマーケティング施策で獲得した見込み客(MQL:Marketing Qualified Lead)が対象で、インサイドセールス部門のメンバーがメールや電話でリードナーチャリングを引き継いで実施するのが一般的です。
購買意欲は「購買プロセス」が進むに従って上がるので、段階に応じた適切な情報を提供することがインサイドセールスにおけるリードナーチャリングでは重要だと考えられています。
リードナーチャリングの戦略的な仕掛け
リードナーチャリングを成功させるためには、見込み客の情報と抱えている課題をセットで入手できるような戦略的な仕掛けが必要です。
まずは、見込み客が課題解決のためWeb上で情報を探す行動を想定し、そのキーワードで自社ソリューションが検索にヒットするようなコンテンツを用意します。
よくあるのが資料ダウンロードページやWebセミナーなど。
それぞれのコンテンツには個人情報を入力するフォームがついているのが一般的でしょう。
仕掛けを発動させるためには、コンテンツの資料やWebセミナーを課題ごとに用意することがポイント。
大まかな見込み客の事情が判明すれば、それに基づいた営業提案資料を提供したり、営業トークの中でより詳しい課題を引き出したりすることが可能です。
ダウンロード資料が、単なる製品紹介カタログだけでは見込み客がどのような課題をもとにソリューションを探しているか精査できず、育成効率が低下してしまいます。
リードナーチャリングの育成シナリオ
課題と個人情報がセットで入手できたらリードナーチャリングの開始です。
資料ダウンロードやWebセミナー参加のお礼メールが定番でしょう。
お礼メールには購買プロセスの次の段階で知りたくなるユースケースや成功事例、あるいは他社製品比較などが効果的です。
文面をテンプレート化しても構いませんが、担当者の名前や署名を入れ、冒頭は見込み客の会社名と氏名を差し込みましょう。
お礼メールの返信に個別の質問や提案があれば、案件化が可能です。
案件化したら個別の営業活動を開始し、営業提案を行って成約を目指しましょう。
メールへの返信がない場合は、少し間を空けて資料を見てくれたかどうかを尋ねますが、仮に返信がなければ短期的なリード育成は一旦終了です。
ただし、育成終了してもニュースレターや次のセミナーの開催日程などのマーケティング的なお知らせメールは送り続けることが重要です。その中で反応があれば案件化という育成サイクルを回します。
これが最もシンプルなリードナーチャリングの「育成シナリオ」です。
リードナーチャリングの手法
本章ではリードナーチャリングの手法を5つ紹介します。
- ステップメール
- One on Oneメール
- Webセミナー・展示会
- SNS
- リターゲティング広告
それぞれ解説します。
ステップメール
資料ダウンロードや製品紹介動画の視聴、新規アカウント登録などの見込み客のアクションに応じて、用意しておいたメールをスケジューリングしたタイミングで複数回送信するメールのことです。
例えば、資料ダウンロード直後、3日から1週間後、1カ月後に有益な情報を提供することで見込み客の購入マインドの熟成を図ることができるでしょう。
ステップメールを導入する場合は、煩雑な工程を簡略化するためにも自動化ツールを導入するのがおすすめです。
One to Oneメール
見込み客の一人ひとりの行動や属性、状況、興味に合わせて配信するメールのことです。
特定のページを何度も見ている、特定地域からアクセスしている、サービスの無料プランに登録しているなどの見込み客に対して、適切な情報を提示するメールを送信しリード育成を図ります。
見込み客のニーズや行動に合わせて、早いタイミングできめ細かい提案を行えることがメリットです。
Webセミナー・展示会
セミナーの参加者に対してフォローメールを送ることで、リードナーチャリングを図る方法です。
自動化ツールがなくても実施できるので、これからリード育成を始めたいと考えている方におすすめです。
SNS
FacebookやTwitter、LINE、InstagramといったSNSツールで情報発信し、フォロワーを増やすことで商材の認知を増やす方法です。
見込み客の課題や購買プロセスがどの段階にいるのかを把握することはできませんが、購買マインドに影響力を与える可能性のあるインフルエンサーの獲得やコンテンツへの集客導線として活用できます。
リターゲティング広告
ランディングページに訪れたことがあるけれども、資料ダウンロードやセミナー申し込みといった行動を起こさず離脱してしまった見込み客にWeb広告を掲載して再度Webサイトに来てもらいアクションを促す方法です。
メールアドレスを獲得できていない見込み客に対してもリード育成ができる手法で、Google広告やYahoo!広告などで実施できます。
リードナーチャリングを取り入れる際のポイント
本章ではリードナーチャリングを取り入れるときに重要視すべきポイントを紹介します。
- 長期視点で考える
- 成果分析をしっかり行う
- 入り口を認識して育成する
それぞれ解説します。
長期視点で考える
顧客との付き合いは、受注で終わりではありません。
購入後の技術的な相談や使い方の質問を受けたり、納入した商品に不具合が生じたりした場合は対応が必要です。
購入後のサポートはインサイドセールスの直接の役割ではありませんが、顧客サポートが迅速で丁寧な企業の製品やサービスは、信頼感を生み次のビジネスにもつながります。
顧客との長い付き合いから生まれる価値のことを、ライフタイムバリュー(LTV)と呼び、新規の見込み客を育成して受注につなげるよりも、既存顧客から何回も成約を得るほうが営業コストを低く押さえられ、長期的には理があるという考え方です。
LTVを上げる目的で受注後の顧客との付き合いを営業プロセスに組織的に組み込んだのが「カスタマーサクセス」部門です。これもリードナーチャリングの考え方のひとつです。
成果分析をしっかり行う
リードナーチャリングの成果指標は、問い合わせ以前の見込み客に対する問い合わせ数とするのが一般的です。
しかし、何を持って「問い合わせ」とするかは、育成シナリオによって違いますので設計時に定義しKPIとして定めておきましょう。
成果分析は定期的に行うことがポイントです。
成功・失敗要因を考察し、結果を元にシナリオやメール内容、トークスクリプトを改善します。
このようにPDCAを回すことで、適正化が可能です。
シナリオをチューニングし続けることが大切です。
入り口を認識して育成する
実際に、どの入口から見込み客が流入してきたかを測定することが重要です。
多くの顧客が見込まれる入口は、適切に更新しバージョンアップしていくことで、より一層強力な入口として機能します。
自社の強みを理解できれば、そのテーマに沿った分野でさらにブラッシュアップしたプロダクトを展開することで、利益率の向上が見込めるでしょう。
リードナーチャリングの成功事例
本章ではリードナーチャリングの成功事例を2社紹介します。
SATORI株式会社
社名と同じ名前の「SATORI」という国産のMAを提供する企業が、自社ソリューションを使い、リードナーチャリングを含む営業の効率化に成功した事例です。
リードナーチャリングについてはセミナー後のフォローメールで見込み客との接触機会を11倍に増やしました。また、リード育成だけでなく、実践的なマーケティング施策について詳しく紹介されている参考になる成功事例です。
出典:マーケ未経験者が3年間で商談2,000件を創出!SATORIが自社の営業効率化事例を公開|MarkeZine
株式会社リアルマックス
株式会社リアルマックスは、リターゲティングでポテンシャルの高いユーザーと接触する機会を増やした成功事例です。
リアルマックスが運営するゴルフ用品のECサイト「Atomic Golf」で購入を迷っている段階のユーザーに対する接触方法がなく、リスティング広告などのデジタル施策でも見込み客との接点を持ちにくいという課題を抱えていましたが、ツールの導入によりパーソナライズされたメール(One to Oneメール)を配信することにより成果を上げました。
キーワード検索などを行いにくい商材において見込み客との接触機会を増やしたい場合の参考になります。
出典:メールで新規を開拓!?「AdRoll Email」驚異の仕組み:Atomic Golfの成功事例 |DIGITDAY
リードナーチャリングはカスタマージャーニーが重要
消費者向けの製品やサービスとは違い、BtoB商材は衝動的に購入を決めるということはありません。
購買プロセスに基づいた見込み客の一連の思考や感情、行動は「カスタマージャーニー」と呼ばれます。
下記は見込み客の購買プロセスです。
- 自社課題の認識
- 課題解決に必要な機能要件
- 要件を満たす商材(または候補事業者)の調査・選定
- 企業に問い合わせて提案依頼や見積もりの請求
- 社内で要件との適合性を評価・検討
- 社内稟議と意思決定
- 発注
初期段階では、課題があることによる弊害や影響範囲を調べ、知識が深まればどういう解決策があるのかを調べる調査期間。
次にソリューションを提供する企業や商材を見つける認知段階。
最後に詳しい仕様や価格といった情報を問い合わせます。
このようなプロセスを経て購入に至るため、数カ月から数年に渡り顧客との信頼関係を構築していかなければなりません。
リードナーチャリングは育成シナリオ設計が成功の鍵
本記事では、リードナーチャリングの定義から、戦略的な考え方、具体的な手法、成功事例までを解説しました。
リードナーチャリングで成果を上げるには、購買プロセスに沿った見込み客の行動(カスタマージャーニー)に基づく育成シナリオを戦略的に設計することが重要です。
しっかりした設計ができれば、見込み客がどのように商材を選定しどういう購買行動をとっているのかを分析して営業活動に活かしましょう。
投稿者プロフィール
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1985年福岡生まれ
福岡発のインサイドセールス支援会社、soraプロジェクトの代表
スタートアップから外資大手まで700以上の営業支援プロジェクトの実績を持つ。
営業活動でお困りの会社様へターゲットリスト作成から見込み客育成、アポの獲得まで、新規開拓の実行支援が専門分野。
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