目次
自社の商品の良いところをすべて伝えようとして、相手をうんざりさせてしまうなんて経験はないでしょうか。
一般的に人間がその場で頭に入れられる情報は4つまでであり、この数はマジカルナンバーと呼ばれています。
マーケティングにおいてマジカルナンバーを意識できているかどうかは、商品の印象に大きく影響します。
この記事では人の記憶に残るセールスを行う重要なキーワード、マジカルナンバーについて詳しく紹介します。
人の記憶を司るマジカルナンバーとは?
マジカルナンバーとは、人間が瞬間的に記憶に残せる情報の数のことです。
もっともよく知られたマジカルナンバーは7±2個であり、これは発表者であるジョージ・ミラー教授の名前から取ってミラー効果とも呼ばれています。
また、現在では研究が進みマジカルナンバーの上限は4±1個程度であると考えられています。
まずは短期記憶、チャンク、マジカルナンバーなどの基本用語について順を追って解説します。
短期記憶とは?
短期記憶とは、その場で一時的に脳に保持できる記憶のことです。
短期記憶とそれを制御する機能全体を含めてワーキングメモリといいます。
短期記憶は保持できる情報量に上限があり、最大でも数時間しか保持されません。
新しい情報が次々と入ってくるため、多くの場合は数分も経たないうちに忘れられてしまいます。
この短期記憶を繰り返し行うことで、私たちが一般的に「長期記憶」と呼んでいる記憶へと情報が定着します。
マーケティング活動の目的が顧客の記憶に残ることだとすれば、営業とは顧客の短期記憶をいかに獲得し、それを長期記憶へと移行させるかを工夫する仕事といえます。
脳が効率的に記憶するための情報単位”チャンク”とは?
短期記憶は非常に容量が少なく、残せる情報は限られています。
しかし人間の脳は柔軟なため、複数の情報を一つの塊としてまとめることができます。
ジョージ・ミラー教授は、この塊のことを”チャンク”と名付けました。
例えば、11桁の電話番号「080-1234-5555」を覚えるとき、大勢の人は「080」と「1234」と「5555」の3つの情報で覚えようとするはずです。
決して0、8、0……のように11個の数字を覚えようとはしません。
これは数字に限った話ではありません。
例えば、North Atlantic Treaty Organization(北大西洋条約機構)はNATOと呼ばれますし、情報伝達技術(Information and Communication Technology)はICTと呼ばれます。
これは、頭文字を利用して長い情報を一つにまとめて覚えやすくする工夫です。
このチャンク化は、わかりやすい営業資料を作る場合にも有効です。
同じグループのものを赤い枠で囲ったり、複数の特徴を一つのタイトルに要約したり。
覚えやすい資料は、類似する情報をチャンクにまとめて説明しています。
相手に効率的に情報を伝えるために、チャンクの活用方法を考えることが重要です。
現在主流のマジカルナンバー4について
ジョージ・ミラーのマジカルナンバーは認知心理学や脳科学に大きな影響をもたらしました。
ですがそれ以上に、記憶の整理術や、相手により多くの情報を伝えるための組み立て方を考える契機になりました。
その後、多方面において詳しい研究が進められ、ミラーの発表から50年後にネルソン・コーワン教授のマジカルナンバー4±1が発表されます。
実際に日常生活の中で発揮できる集中力では、7チャンクどころか4チャンク程度しか記憶できないのです。
現在では、このマジカルナンバー4が主流の考え方となっています。
マジカルナンバーは、なぜマーケティングに欠かせないのか
短期記憶の容量は4±1個が上限だとされています。
これはつまり、どれだけ顧客の体調が良くて、興味を引き、簡素にまとめた情報であっても、4個前後の事柄しか覚えられないということです。
当然相手の状況や並行するタスク、情報のまとめ方次第では、さらに少なくなっていきます。
この事実は、万人に向けたマーケティングを行うならば「情報は3つしか覚えてもらえない」ということを意味します。
マーケティングでは、この限られた3チャンクという短期記憶の枠に、どのように情報をまとめるかが重要です。
マジカルナンバーを意識することで、顧客の記憶に残る営業につながります。
伝えたい情報をうまく覚えてもらうためのポイント
限られた短期記憶に自社の情報を覚えてもらうためには、どのような工夫が必要でしょうか。
意識するべきポイントをいくつか紹介します。
重要な情報に優先順位をつける
大抵のケースにおいて、伝えたい事柄の数に対して短期記憶の容量は圧倒的に少ないです。
とはいえ、どれだけ商品の魅力をアピールしてもマジカルナンバー自体を増やすことはできません。
伝える情報の優先順位を整理しておき、重要な情報ほど何度も繰り返して伝えましょう。
最低限必要な情報だけでも覚えてもらうことで、次につなげることができます。
類似する情報をグループ化してまとめる
より多くの情報を伝えたいならば、相手の脳にチャンク化を促すように工夫するべきです。
伝えたいことを積極的にグループ化することで、相手が記憶しやすくなるように手助けしましょう。
例えば、類似する情報にはカテゴリやタグ名をつけて積極的に抽象化、グループ化するとより多くの情報を伝えられます。
情報を階層化させる
伝えたい情報が多い場合は、抽象的な情報から具体的な情報へと階層化させることで効率よく相手に情報を伝えることができます。
より多くの情報を知ってもらうために抽象化してチャンクにまとめ、抽象化しすぎた情報はタイミングに応じて詳細化しましょう。
視覚的要素に結びつける
人の記憶は、五感から得たさまざまな情報と結びついて覚えられます。
特に人間は視覚から多くの影響を受けるため、視覚的要素に関連付けることでより覚えてもらいやすくなります。
例えば、同じグループのものは線で囲む、優先順位の高い情報だけ別の色に変える、といったように視覚的な差別化を図ると記憶がスムーズに整理されます。
視覚化と階層化を意識することで、短期記憶に残りやすい資料を作ることができます。
記憶の定着を意識する
どれだけ工夫しても短期記憶は数時間しか持続しないため、最終的には記憶の定着を意識する必要があります。
短期記憶に何度も置かれた情報は、徐々に長期記憶へと定着します。
例えば、重要な情報は伝え方を変えて何度も説明し、いつでも確認できる資料を用意することで、顧客の短期記憶に何度も情報を刻むことができ、やがては長期記憶へと定着します。
マーケティングでマジカルナンバーを意識するならば、ぜひ記憶の定着についても意識してみてください。
資料「マーケティング支援サービス資料」を無料ダウンロードマーケティングでのマジカルナンバー活用例
マジカルナンバー4の法則はマーケティングのさまざまな分野で活用されています。
ここではビジネスにおいてマジカルナンバーが活用されているマーケティング例をいくつか紹介します。
スマートフォンアプリやWebサイトの利用しやすいUI
出典:PayPay(2024年11月10日時点)
多くのスマートフォン用アプリにおいて、UIのメインボタンの数は多くても5つ以下に設定されています。
また、5つの場合は優先して使うべきボタンは見た目を変えてチャンクを階層化させることが多いです。
例えば、上記画像はPayPayアプリの画面です。
メインの機能は下に5つのボタンでまとまっており、もっとも重要な「支払い」ボタンは真ん中に置き、色と形を変えて強調しています。
また画面内も4つに分割され、目的に合わせて階層的になっています。
選択のパラドックスを利用したラインナップの最適化
人間はチャンクを超える情報を一気に渡されるとストレスを覚えます。
この選択肢が多すぎると逆にストレスになる行動心理は、選択のパラドックスとして知られています。
マーケティングにおいて、顧客に提示するラインナップの選び方は選択のパラドックスに触れないように気をつけて設計されています。
GoogleOneのラインナップ
多くのSaaSやサブスクリプションサービスでは、プランを「ベーシック」「スタンダード」「プレミアム」などの3プランに絞り込んでいます。
例えばGoogle Oneのプラン画面です。
近年AIプレミアムが追加されましたが、基本は「無料」「ベーシック」「プレミアム」であり、さらにより注視してほしいベーシックが強調されています。
サイゼリアのメニュー
レストランのメニューも1つのカテゴリにつき4種類前後に絞ることで、ラインナップを最適化しています。
上記はサイゼリアのメニューの一部です。
それぞれがハンバーグなどのカテゴリに分けられ、1ページに3つ以下のカテゴリになるよう階層化されており、カテゴリ内のメニューも4種類程度に絞っています。
カンバンボード
出典:miroのカンバンボードテーマ(2024年11月10日)
人間のワーキングメモリを空けるためによく活用されるのが、カンバンボードです。
多くのプロジェクト管理ツールがカンバンボードを機能の一つとして用意されています。
※画像はオンラインホワイトボードサービスmiroのカンバンボードテーマです。
カンバンボードは、たった4チャンクしか覚えられない人間がワーキングメモリを空けるためのテクニックです。
短期記憶内のチャンクを付箋に吐き出すことで、マジカルナンバーを擬似的に増やし、短期記憶に煩わされずにタスクに集中できます。
まとめ:マジカルナンバーを意識して、顧客の記憶に残る営業活動を!
マジカルナンバーは、一時的に記憶してもらえる情報量を示す言葉です。
人間の脳は、瞬間的には4つ前後しか情報を保持できません。
マジカルナンバーを意識することで、より顧客に自社の商品を覚えてもらいやすくなります。
情報をグループにまとめて抽象化する、視覚的にチャンク化を補助するなど、ぜひマジカルナンバーを意識して顧客の記憶に残るマーケティング活動を行ってみてください。
株式会社soraプロジェクトでは、効率的な営業ノウハウ、マーケティング支援など、営業活動に特化した資料を提供しています。
マーケティングにお悩み企業様はぜひ一度ご相談ください。
投稿者プロフィール
-
1985年福岡生まれ
福岡発のインサイドセールス支援会社、soraプロジェクトの代表
スタートアップから外資大手まで700以上の営業支援プロジェクトの実績を持つ。
営業活動でお困りの会社様へターゲットリスト作成から見込み客育成、アポの獲得まで、新規開拓の実行支援が専門分野。
最新の投稿
- 2024年11月27日マーケティンググロスとネットとマージンの違いは?マーケティングで知っておきたい利益の計算式
- 2024年11月27日営業代行営業活動におすすめのWebメディア・広告営業メディアの種類を解説
- 2024年11月27日マーケティングAmazon SEOとは?商品を上位表示させる対策方法を詳しく解説
- 2024年11月27日マーケティングバーナム効果とは?マーケティングでの活用例を3つご紹介