グロスとネットとマージンの違いは?マーケティングで知っておきたい利益の計算式

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マーケティング、特に広告投資を検討する際に「グロス」や「ネット」という専門用語を耳にすることがあります。
これらは金額や利益を確認するための用語ですが、実際のところ、何となく理解して使っている方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、なかなか人には聞きづらいグロスとネットの違い、そしてマージンとの関係について詳しく解説していきます。

グロスとネットとマージンの関係

グロスもネットも、ビジネスの利益やマージンについて検討する際に用いられます。
最終的な収益を予測する際には、両者の違いを理解し、どこにマージンが含まれるのかを把握しておく必要があります。

とはいえ、3者の関係はそれほど複雑ではありません。
基本的にはグロス(利益)=ネット(原価)+マージン(手数料)という関係です。

グロス、ネット、マージンについてそれぞれ詳しく見ていきましょう。

グロスとは?

グロス(Gross)とは総計(あるいは、全体の)という意味の言葉です。
ビジネスにおいてはグロス金額、グロス取引のような形で使われ、その費用や取引にかかる金額全体の合計を意味します。

例えば商品取引時のグロス金額とは、顧客が最終的に支払う総額を指しますし、広告費用で言えば、グロス金額とは実費に代理店の手数料を上乗せした合計額を指します。
グロスは、ビジネスがどれだけの総収益を稼いでいるかを判断するための重要な指標です。

ネットとは?

ネット(Net)は、純益(あるいは、正味の)という意味の言葉です。
ビジネスにおいてはネット金額、ネット取引のような形で使われ、商品やサービスの原価、または材料費などを意味します。

例えば、商品取引時のネット金額とはマージンを差し引いた原価を指し、広告費用で言えば、ネット金額とは広告にかかる実費単体を指します。
あるいは、「グロスからマージンを差し引いたものがネットである」ともいえます。

ネットはビジネスに必要なコストの実態であり、企業はネットを正しく把握することで始めて費用対効果の検討が行えます。

マージンとは?

マージン(Margin)とは、利ざやを意味する言葉です。
端的に言えば、グロス(商品価格)からネット(原価)を引いた総利益や粗利のことです。

例えば、広告業界で言えばマージンは手数料そのものを指します。

マージンの多寡は企業の儲けそのものであり、ビジネスを成長させるための重要な指標です。
また、他社との取引においてはコスト交渉や付加価値のアピール、取引先の再検討において重要なポイントとなる指標です。

グロス・ネット・マージンを整理できていないとどうなるか?

グロスやネットは企業のコスト管理に大きく影響する概念です。
取引においてグロス・ネット・マージンが整理できていない場合どのような悪影響がでるのでしょうか。

それぞれのリスクについて紹介します。

グロスが曖昧だと収益の全体像がわからない

グロスが曖昧なままでは、予算管理や収益評価を見誤る危険性があります。
プロジェクトの予算管理やコストの透明性を確保するためには、まずは収支の全体像を把握しなければなりません。

ここでいう全体像とは、関連するすべての費用と収益を含んだ明確なグロスベースの基準のことです。
グロスが不明瞭なままだと、企業は予算を正確に管理できず、収益の予測が困難になり、想定外の追加費用に悩まされ続けます。
結果として計画していた利益が圧迫され、当初の予算から大幅にオーバーするリスクがあります。
逆にグロスが明確であれば、事前に必要な予算や見込まれる収益を予測可能です。

明確なグロスを基準にした予算管理を行うことで、ビジネスを安定して成長させることができます。

ネットが曖昧だと支出の実態を見誤る

ネットの実態が曖昧なままでは、支出の実態を見誤り、予算超過する危険性があります。
ネットの実態、つまりコストの詳細が理解できていないならば、無駄な支出を切り分けることができません。

例えば、想定しているネット(原価)と現実の支出が噛み合っていなければ、差額分が用途不明の雑費として膨れ上がり、いつまでも赤字が解消されません。

ネットの実態を明確に整理することで初めて、想定外の雑費そのものを減らし、収益を安定させることが可能です。

マージンが曖昧だと利益が伸び悩み成長が止まる

あらゆるビジネスにおける交渉は、最終的にお互いのマージンをどれだけ確保するのかということに収束します。
そのため、マージンが曖昧なままでは、どれだけ良いサービスでも利益を最大化することは難しくなります。

マージンが曖昧だと、コスト削減のチャンスも、利益減収のリスクも見逃してしまいます。
例えば、マージンが不透明なままプロジェクトを進めた場合、予想外の追加コストにより利益が圧迫されるリスクがあります。
この場合、利ざやが不明瞭なので適正なコストの見直しもできません。
結果として予算が無駄に消費され続けます。

あらかじめマージンの透明性を一貫して確保すれば、コストと利益を明確に管理できるため、このような予算超過を防ぐことが可能です。

ネットとグロスの計算方法

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前述の通り、基本的にネットグロスの計算イメージは、「グロス(利益)=ネット(原価)+マージン(手数料)」という理解で問題ありません。

例えば、広告配信コストが80万円、手数料が20万円とすると、以下のように計算します。

計算方法金額
グロスネット+マージン80万円+20万円=100万円
ネット広告配信コストそのもの80万円
マージン定額の代理店手数料20万円

しかし、広告業界では、マージンを固定値ではなく”率”で計算することがあります。
例えば、「マージンを20%いただきます」のような取引です。

このマージンがグロス建ての計算(グロス取引)なのか、ネット建ての計算(ネット取引)なのかによって、最終的な収支が大きく変わります。
以下では、グロス取引とネット取引の計算方法について紹介します。

グロス取引と計算方法

グロスの金額を基準にマージンなどの計算を行うことをグロス取引といいます。

グロスをベースに20%のマージンを取る場合は、以下のように計算します。

計算方法金額
グロスネット ÷(1-マージン率)80万円×10/8 =100万円
ネット広告配信コストそのもの80万円
マージングロスの20%(マージン率)20万円

グロス取引はマージンの料金が最終的な金額から直感的に割り出せるため、かつては多くのマーケティング業界で使われていました。
今でも、新聞広告などではグロス取引を行う企業が多いです。

しかし、マージンの内訳や本来の広告掲載費用が不透明になりやすいため、近年は徐々にネット取引が人気となっています。
特に海外企業との取引は、コストを透明化しやすいネット取引のほうが主流になっています。

ネット取引と計算方法

ネットの金額を基準にマージンなどの計算を行うことを、ネット取引といいます。
原価や広告配信コストそのものにかかる金額がネットであり、ネット取引は最初に固定化されている金額をベースにマージンを考えます。

ネットをベースに20%のマージンを取る場合は、以下のように計算します。

計算方法金額
グロスネット + マージン80万円+16万円=96万円
ネット広告配信コストそのもの80万円
マージンネットの20%16万円

ネット取引は、グロスの計算方法が明快な点や代理店の付加価値を透明化しやすい点から好まれています。
同じレートならばグロス取引よりもマージンが減ってしまいますが、ネット取引ならば「基本料金は20%で、追加要望のたびに+5万円いただきます」といった対応が可能です。

グロス取引にするかネット取引にするか、昨今の広告媒体や営業先の多様化により、取引方法は一貫していません。
契約を行う際は、受注側でも発注側でもマージンがどこにかかっているのかに十分な注意が必要です。

広告におけるグロスネットの計算イメージ

いくつか混乱しやすい広告における計算イメージを紹介しておきます。

広告費のマージンがあやふやになるケースのイメージ

もしマーケティングのためにWeb広告を出す場合、予算をグロスとネットのどちらに基準を置くかは重要です。
例えば広告代理店に、月間の予算を100万円で発注したとします。

この際に代理店が「ネットで100万」と認識した場合、マージンを足して毎月120万円が請求され、予算がオーバーする可能性があります。
逆に、代理店が「グロスで100万」と認識した場合、広告配信には80万しか使えません。

求めていた規模感のものができあがらない可能性があります。
どちらにしても、マージンがどこに関わるかをはっきりさせておかないと、大きなトラブルに発展する可能性があります。

CPAの計算イメージ

広告の効果を確認したい場合、しばしばCPA(Cost Per Acquisition:顧客獲得単価)を指標に用います。
この際に、グロスとネットを意識して切り分けなければ、正しい指標になりません。
例えば、広告配信コストが80万円、広告代理店手数料が20万円、月当たりの顧客数が100件の場合について考えてみます。

グロスでのCPAの計算イメージは以下のように計算するので、CPAは1万円です。

計算方法金額
グロスCPAグロス広告費÷獲得件数100万円÷100件=1万円
グロス広告費手数料を含む広告の総費用100万円(80万円+20万円)
獲得件数単位月当りの顧客の獲得件数100件

一方でネットでのCPAの計算イメージは以下のように計算するので、CPAは8000円です。

計算方法金額
ネットCPAネット広告費÷獲得件数80万円÷100件=8000円
グロス広告費手数料を含む広告の総費用80万円
獲得件数単位月当りの顧客の獲得件数100件

つまり、グロスで考えたときは顧客あたり1万円の効果があり、ネットで考えたときは顧客あたり8000円の効果があるわけです。

この2つのCPAはまったく同じことを指していますが、数値上はまるでネットで計算したときのほうが広告効率が悪いように感じてしまいます。
数値のイメージは経営判断に大きく影響するため、CPAなどの指標計算はグロスとネットどちらで行うかを、あらかじめ統一しておくべきです。

グロスやネットをマーケティングで使う際の注意点

グロスやネットはさまざまな取引で用いられる用語ですが、安易に使用するとトラブルが起きやすい用語でもあります。
グロスやネットを使う際の注意点について解説します。

曖昧で包括的な言葉であるという理解をしておく

価格交渉や投資判断を行う場合、「グロス・ネットという言葉が包括的な単語である」という点には注意しましょう。
グロスやネットという表現だけでは範囲が曖昧になりやすく、具体的な話し合いや検討の際に認識のズレが起こる危険性があります。

例えば、「このDXソリューションを導入したことで、他社では当該部門で10億円の利益を上げました」とアピールしても、グロスとネットの認識が違うと、10億円の価値について認識がズレてしまいます。
さらに、お互いにグロスベースで会話しても、業界の慣習が違えば指す範囲が変わります。
こちらが利息を除いた営業利益を想定していて、相手は部門の純利益のことを想定している、といったリスクがあります。

目的が交渉にしても営業にしても、グロスやネットという言葉を利用する際には、結局は裏付けとなるより具体的で明確な説明が必要となることは意識しておきましょう。

逆に言えば、顧客からグロスやネットという言葉が出たら、それに何が含まれているのか、あるいは何が差し引かれているのかを尋ねるべきです。

顧客説明時は図や具体的な例示を用いて明確に説明する

記事の冒頭でも説明しましたが、グロスやネットはついつい”何となく”使ってしまいやすい用語です。
しかし、マーケティングではこの”曖昧さ”がトラブルを引き起こします。

顧客への説明時には、グロス・ネット・マージンがそれぞれ何を指しているのか、端的な表現を用いて明確にしましょう。
例えば、口頭による説明に加えて数値と図表で表した資料を別途用意すれば、用語による認識ズレを防止できます。

特に昨今では、取引先の業種やその広告媒体が多様化しています。
広告費一つにとっても、認識の違いによって思わぬリスクを抱えかねません。
取り返しのつかないズレが生じる前に、打ち合わせの段階でトラブルを回避しておくべきです。

業界によってグロスとネットのイメージが違うことを知っておく

普段とは異なる取引先とビジネスを行う際には、用語が持つイメージの差にも気を配る必要があります。
異業種間交流も活発になっているので、業界の慣習によってグロスやネットが微妙に異なることも事前に知っておきましょう。

いくつかの業界におけるグロス、ネット、マージンの一例をまとめてみましたので、参考にしてみてください。

業種グロスネットマージン
広告代理店手数料や制作費を含む全体の費用広告の配信費用
または制作費用+配信費用
代理店の手数料
小売商品の販売価格仕入原価粗利益
ファイナンス総投資利益投資で得た純利益証拠金や取引手数料
製造業製造コストや管理費、物流を含む販売価格原材料および製造のみに関わるコスト売上高から製造原価を引いたもの全般
不動産収入賃貸の総収入管理費や修繕費用を含まない家賃収入仲介手数料や手付金
エネルギー関連事業設備投資や手数料を考慮した全体的な売上発電にかかわる直接的な費用設備利用料や販売手数料
人材派遣総報酬額派遣社員に支払う給与派遣手数料
オフィスの契約エレベーターやトイレなど契約に含まれる総計の面積(グロス面積)
実際にオフィススペースとして利用できる面積(ネット面積)なし
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まとめ:グロスとネットの違いを理解してビジネスの成長につなげましょう!

本記事では、混同されやすいマーケティング用語であるグロスとネットの違いについて解説しました。
グロスは総収益を、ネットは原価を、マージンはグロスからネットを引いた手数料を指します。
特にマージンが含まれている部分や、どこまでをネットとするかによって、最終的な収益や経費が大きく変わるため、広告費などを検討する際は注意しましょう。
紹介した計算イメージなども参考にしてみてください。

マーケティング業界において、グロスやネットを意識することは誰もが行っていることですが、それだけにリスクを理解している人は多くありません。
今後の取引にどこまで影響するのかを見極め、用語の違いをしっかりと頭に入れておきましょう。

近年は、広告媒体一つとっても多様化しており、取引先の選定や分析、営業戦略が複雑化しています。
株式会社soraプロジェクトでは、さまざまなマーケティング支援を提供しております。
営業活動で悩みを抱えている方や、より効率的なマーケティングを模索している企業様は、ぜひ一度ご相談ください。

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投稿者プロフィール

樋口 裕貴
樋口 裕貴
1985年福岡生まれ
福岡発のインサイドセールス支援会社、soraプロジェクトの代表
スタートアップから外資大手まで700以上の営業支援プロジェクトの実績を持つ。
営業活動でお困りの会社様へターゲットリスト作成から見込み客育成、アポの獲得まで、新規開拓の実行支援が専門分野。