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フレーミング効果とは、同じ内容の情報であっても伝え方や表現によって、受け手の意思決定や行動に異なる影響を与えるという心理現象のことです。
認知バイアスとも呼ばれるフレーミング効果は、人の経済行動にも大きな影響を与えるとして、ビジネスやマーケティングにおいても近年注目されつつあります。
しかし「フレーミング効果とは具体的にどういうものなのか」「どうすれば効果的に活用できるのか」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、初心者に向けてフレーミング効果の概要やマーケティングやビジネスにおける活用方法を解説します。
具体的な活用方法も紹介しますので、フレーミング効果に興味がある方の参考になれば幸いです。
フレーミング効果とは
フレーミング効果とは、同じ内容の情報や選択肢であっても、それを伝える際の表現方法によって、人の意思決定や判断が大きく異なるという心理現象を指します。
以下では基本概念や行動経済学との関係などを詳しく解説します。
フレーミング効果の基本概念
フレーミング効果は、同じ内容の情報であっても、伝える際の表現方法(フレーム)によって、人の意思決定や判断が変化するという認知バイアスのひとつです。
Direct Communications ではフレーミングを「問題の提示の仕方が考えや選好に不合理な影響を及ぼす現象」と定義しています。
この心理現象は1986年に、行動経済学者のダニエル・カーネマンと心理学者のエイモス・トベルスキーによって提唱されました。
なお、この2人は行動経済学の元となったプロスペクト理論の提唱者でもあります。
フレーミング効果の例として、手術の説明において「成功する確率は90%です」と伝えるか「手術が失敗する可能性は10%です」と伝えるかで、受け手の印象は異なります。
どちらも同じ内容の情報ですが、前者は肯定的な表現(フレーム)であり、後者は否定的な表現として患者や家族に伝わり、治療方法の選択にも影響を与えるという結果が研究によって明らかになっています。
このように人の意思決定は必ずしも合理的な判断によって選択されるわけではなく、情報の伝え方に大きく影響されることがフレーミング効果で実証されたのです。
資料「マーケティング支援サービス資料」を無料ダウンロードフレーミング効果と行動経済学
フレーミング効果は、行動経済学の重要な研究テーマのひとつでもあります。
行動経済学は、人の損失を避けたいという心理を元に経済行動を読み解くプロスペクト理論に端を発しており、フレーミング効果を説明する基盤です。
行動経済学によると、人は一定の条件下では、利益を得る満足感よりも、損失を被る不安や不快感を回避する傾向にあります。
例えば、手術の成功確率が90%の場合、人によっては10%の失敗の可能性に不安を感じ、手術を行わない選択をする場合があります。
これは、利益と損失では人の意思決定に与える影響が異なり、必ずしも合理的な選択をするとは限らないという例のひとつです。
フレーミング効果を含む行動経済学の理論を用いると、人の意思決定をより合理的に理解する助けを得られる場合があります。
フレーミング効果の重要性
フレーミング効果はビジネスやマーケティングにおいて、人の経済行動を理解する上で、重要な意味を持っています。
なぜなら、フレーミング効果を用いると、商品やサービスの提示の仕方によって、顧客や消費者の選択にどのような影響を与えるかを論理的に考察するきっかけを得られるからです。
また、同じ商品やサービスであっても、見せ方や表現方法を変えることで、売上に違いが生まれることもあります。
例えば、ある商品に関して、顧客満足度85%というアンケート結果があったとして、「85%が満足した」という表現をするとよりポジティブな印象を与えられます。
一方同じ事象を「15%が不満を感じた」と表現すると、顧客はよりネガティブな印象を受けます。
表現方法もターゲットに好まれるかどうかで工夫が可能であり、例を挙げると「ダイエットに効果的」という表現よりも「健康的な体型を手に入れる」という表現の方が好まれる傾向があります。
人の心理に与える影響を踏まえて、適切な表現(フレーム)を選べるようになることは、マーケティングやビジネスにおいても重要です。
心理学におけるフレーミング効果の種類
フレーミング効果には主に3つの種類があると言われています。
利益確定型、損失確定回避型、ゴルディロックス型の3つです。
以下ではそれぞれの特徴について詳しく説明します。
利益確定型
利益確定型のフレームとは、人が不確実な利益よりも確実な利益を好む傾向に基づいた手法です。
期待値が同じであっても、人は確実に得られる利益を好む傾向にあります。
例えば、「1,000円キャッシュバック」キャンペーンと「抽選で10,000円が当たる」というキャンペーンでは、多くの人が「1,000円キャッシュバック」に魅力を感じます。
抽選で当たる確率が高く、両方の期待値が同じであったとしても、確実な利益が手に入る選択肢のほうを多くの人は選びます。
つまり、クーポンを発行する場合を考えたときに、次回使えるクーポンよりも、今すぐ使えるクーポンのほうがより購買意欲を高められるのです。
確実な利益を提供することは、顧客や消費者の経済行動に大きな影響を与えられます。
損失確定回避型
損失確定回避型のフレームは、人が損失を避けようとする心理に働きかける手法です。
これは同じ状況でも、損失を強調した場合のほうが、より強く回避行動を引き起こすような影響を与えられる、という傾向を活用しています。
例えば、「今この商品を購入すると1,000円得する」という表現と「今この商品を購入しないと1,000円損する」という表現では、後者のほうがより強く人に働きかけると言われています。
これは、損失を回避したいという多くの人が共通して持っているという心理に働きかけるためです。
損失確定回避型のフレームの例としては、期間限定セールなどが挙げられます。
「このチャンスを逃すと割引価格で購入できない」などの表現は、損失を回避したいという人の心理に訴えかけます。
損失確定回避型のフレームは、潜在的な損失を示し、より強く人に訴えかけられるのです。
ゴルディロックス型
ゴルディロックス型のフレームは、複数の選択肢がある場合、人は中間的な選択肢を選ぶという傾向を活用した手法です。
例えば、商品やサービスのプランをベーシック・スタンダード・プレミアムという3つのランクで選択肢を提示すると、多くの消費者が真ん中のスタンダードプランを選択する傾向にあります。
もっとも安いプランだと機能を十分に使えないのではないか、という機能面での損失を回避したいという心理が働きます。
また、もっとも高いプランでは適切な価格よりも払い過ぎてしまうのではないかというコスト面での損失を回避したいという心理になり、結果真ん中のスタンダードが選ばれるのです。
ゴルディロックス型のフレーミング効果を活用すると、適切な選択肢を提供することによって企業が訴求したい商品やサービスへの誘導も可能です。
フレーミング効果を活用するには
フレーミング効果を適切に活用すると、マーケティングやビジネスにおいても高い効果が期待できます。
以下では、顧客の心理を理解する・顧客の不安を解消するの2つの側面から、フレーミング効果の活用のポイントを紹介します。
顧客の心理を理解する
フレーミング効果を適切に活用するためには、商品やサービスの特性とターゲットとなる顧客の心理状態を把握することが大切です。
特に顧客の損失を回避したいという基本的な心理を理解し、状況に応じて表現方法を使い分ける必要があります。
例えば、自社の商品がすぐに使えるものだったり、すぐに効果があるものなら「今すぐ購入しないと損をする」というネガティブな表現が効果的です。
長期的な価値を提供する商品やサービスの場合は、「将来の安心につながる」「継続的な利益が得られる」などのポジティブな表現がより顧客に響く場合があります。
また、商品やサービスの購入にどれくらい検討期間が想定されるかによっても、表現を変える必要があります。
すぐに購入可能な商品の場合は「今ならお得」と緊急性を強調することで、購買意欲を高められます。
一方、慎重な判断が必要な場合は、「この機会を逃すと手に入らない」という表現よりも、「購入した場合の将来における利益」を強調することのほうが効果的である場合も多いのです。
自社の商品やサービスとターゲットとなる顧客の心理に合わせて、表現を選ぶことをおすすめします。
顧客の不安を解消する
予防的な価値を適切に伝えるなどの顧客の不安を解消する形で、フレーミング効果を活用することもできます。
将来起こりうるトラブルや問題を事前に防ぐ表現を適切に用いることで、顧客の損失回避の心理を刺激できるためです。
例えば、保険商品やパソコンのウイルス対策ソフトなどの場合、契約や購入によって想定される不利益な状況を回避できるという印象を与えられると、顧客の購買意欲を促せます。
またその際、「被害に遭うリスクを減らす」という表現よりも「安心な環境を整える」というプラス思考の表現のほうが好まれる傾向も指摘されています。
顧客の不安を解消するフレーミングの場合であっても、商品やターゲットに合わせて、ネガティブな状況を強調したり、損失を強調するだけでなく、より顧客に響く表現を考えて提供する必要があります。
フレーミング効果をマーケティングに活用しよう
フレーミング効果は、同じ情報でも表現方法など提供方法を変えることで、受け取り方が変わるという人の心理に基づいています。
フレーミング効果を活用すると、マーケティングやビジネスにおいてより効果的な表現を見つけやすくなり、メッセージの伝え方を工夫できます。
しかし単に表現方法を変えるだけでは、顧客との信頼関係を長期的に築くことにはつながりません。
信頼を損なわないように、自社のサービスや商品とターゲットの要望をすり合わせることが大切です。
顧客や消費者と長期的に信頼関係を築くことを念頭に置きながら活用するなら、フレーミング効果はマーケティングやビジネスにおいて有効な手段になり得ます。
単なるテクニックとしてではなく、顧客視点でのマーケティング戦略を実現するようにしてください。
より効果的なマーケティング方法をお探しなら、マーケティング支援会社を活用するのもおすすめです。
株式会社soraプロジェクトでは、自社の課題や実情に合わせたマーケティング支援を行っています。
自社にとって適切なマーケティング方法を知りたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
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1985年福岡生まれ
福岡発のインサイドセールス支援会社、soraプロジェクトの代表
スタートアップから外資大手まで700以上の営業支援プロジェクトの実績を持つ。
営業活動でお困りの会社様へターゲットリスト作成から見込み客育成、アポの獲得まで、新規開拓の実行支援が専門分野。
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