アクティブリスニングとは?主な手法とトレーニング方法を解説

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ビジネスの現場で、傾聴力という言葉をよく耳にするようになりました。
相手の話を深く理解し、集中して話を聴くことができる傾聴力は、信頼関係を構築するために不可欠な要素とされています。

この記事では傾聴力を高めるための技術、アクティブリスニングの代表的な手法や注意点について紹介します。

アクティブリスニングとは

アクティブリスニングとは、相手の話をただ聞くだけでなく、相手に寄り添い、話す内容により深く理解や共感を示すことで、深いコミュニケーションと信頼関係を築く技術です。
端的に言い換えれば、聞き上手になるための技術です。

日本語で言えば積極的傾聴と表され、単なる聞き手としての役割を超え、相手の背景や考え方に対して積極的に関心を持つことを目指します。
元々は臨床心理学者が提唱したカウンセリングテクニックの一つであり、アクティブリスニングを実践することで、相手は自分の考えや感情が真剣に受け止められていると感じ、コミュニケーションが活発化します

アクティブリスニングと傾聴の違い

傾聴という言葉は、パッシブリスニング(受動的傾聴)とアクティブリスニング(積極的傾聴)の両方を含む、より広範な概念です。

アクティブリスニングと比べ、パッシブリスニングは単に話を聞くだけに徹する受け身の姿勢を指します。
対してアクティブリスニングは、より積極的に相手へ共感を伝える手法です。
言葉や感情、その背景に対して積極的に反応し、心に寄り添いながら相手への理解を深め、場合によっては適切な相槌や質問を行うことでさらに会話を弾ませるよう努力します。

アクティブリスニングは一般的な傾聴よりも更に積極的なコミュニケーションテクニックと言えます。

アクティブリスニングが注目されている背景

近年のビジネス社会では、ハラスメント問題やチームワークの強化がより重要視されるようになりました。
ハラスメント問題もチームワーク問題も、根本をたどれば如何に信頼関係を構築するかに行き着きます。
お互いの信頼関係が強固なものであれば、意見を活発にすり合わせることができ、些細なやり取りで相手を傷つける心配がありません。

そこでコミュニケーションの質を高める方法として注目されたのがアクティブリスニングです。
アクティブリスニングを利用することで、相手の感情や考えを深く理解し、対話を通じて信頼関係を築くことができます。
職場やチーム内での信頼関係の深さが求められる今、アクティブリスニングの重要性はますます高まっています。

アクティブリスニング3つの心構え

アクティブリスニングは、カウンセリングの大家であるアメリカの心理学者カール・ロジャーズによって提唱されました。
ロジャーズ氏は、アクティブリスニングを行う際に重要な3つの心構え(ロジャーズの3原則)として「共感的理解」、「無条件の肯定的関心」、「自己一致」を上げています。

3つの要素について詳しく紹介します。

出典:中央労働災害防止協会「メンタルヘルス教育研修担当者養成研修テキスト」(平成22年)

共感的理解

共感的理解とは「相手の話を相手の立場に立って、相手の気持ちに共感しながら理解しようとする」ことです。
平たく言えば、相手に寄り添い、自分ごとのように考えながら話を聞くことです。

アクティブリスニングでは単に話を聞くだけでなく、相手がどんな気持ちで問題に直面しているのかを共有し、相手の気持ちをしっかりと受け止めることが重要です。
相手は自身の気持ちに寄り添われることで、「この人は自分のことを理解してくれている」と感じ、安心感と信頼が生まれます。

無条件の肯定

無条件の肯定とは、「相手の話に偏見を持たず、相手の話を否定せず、なぜそのように考えるようになったのか、その背景に肯定的な関心を持って聴く」ことです。
平たく言えば、相手の話を否定せずに、まずは最後まで話を聞くことです。

たとえどれだけ話し手の意見や考え方が自分の常識から外れたものであっても、口を挟んだり否定したりせずに、まずはすべてを受け入れることがアクティブリスニングでは重要です。
相手自身の考えを否定するのではなく、「どのような背景からそう考えるのだろうか」と関心を示し、相手の考え方に理解を示すことで、初めてお互いが否定されない安心できる会話が成立します。

無条件の肯定は、相手の心の壁を取り払う第一歩となり得ます。

自己一致

自己一致とは、「聴き手が相手に対しても、自分に対しても真摯な態度で、話がわかりにくいときはわかりにくいことを伝え、真意を確認する。」ことです。
平たく言えば、自分や相手に嘘をつかず、わからないことは「わからない」と正直に伝えることです。

理解できないことは素直に聞き返す姿勢を示すことで、問題に協力して立ち向かう雰囲気が生まれます。
また、会話する相手が本音を伝えてくれると感じることで、お互いの信頼関係が生まれ、建設的な意見交換ができます。

アクティブリスニングに期待できる効果

アクティブリスニングの実践には、円滑なコミュニケーション、良好な人間関係の構築、対立の解消や相互理解の促進など多くのメリットが期待できます。

この記事では、以下の4つに分けてアクティブリスニングの効果を紹介します。

  • 円滑なコミュニケーション
  • チームワーク力の強化
  • ハラスメントの防止
  • トラブルの早期発見

円滑なコミュニケーション

アクティブリスニングを実践することで、相手に対して耳を傾ける姿勢が伝わり、自然と信頼関係が深まります。
信頼関係が築かれることで、お互いに対する遠慮や不安が薄れ、率直な意見や懸念を共有しやすくなるはずです。

また、自分の話が蔑ろにされず、意見が伝わるという実感を得ることで、コミュニケーションもより活発化します。

チームワーク力の強化

アクティブリスニングは、価値観の異なる他人同士がお互いを理解し合うためのテクニックとしても有効です。

チームメンバー一人ひとりが自分の意見を尊重されていると感じることで、より積極的にコミュニケーションを取るようになり、チームの結束力が高まります。
その結果、困難な課題にもチーム一丸となって立ち向かうことができます。

ハラスメントの防止

ハラスメント問題は、往々にしてコミュニケーションのすれ違いや認識違い、さらにはお互いの心の問題が原因で発生することが少なくありません。
アクティブリスニングを通じて、相手の考え方に理解を示し、お互いの感情に寄り添うことで、胸襟を開きやすい関係性を築けます。

問題が大きくなる前に誤解や不満を吐き出す機会を設けることで、ハラスメントの発生を未然に防ぐことが期待できます。

人的ミスやトラブルの早期発見

人的ミスやトラブルの発見が遅れる背景には、意思疎通が不十分であることや、問題点が共有されないといった組織体質の課題が遠因として存在します。

しかし、チームリーダーがアクティブリスニングを率先して行うことで、メンバーが自分の考えや問題を自由に話せる雰囲気を作り出すことができます。
このような環境では、そもそもミスやトラブルが小さな段階で共有され、迅速な対処が可能です。

アクティブリスニングの実践例

アクティブリスニングには、言葉を用いて行うバーバルコミュニケーションと、会話外の仕草や姿勢でおこなうノンバーバルコミュニケーションの2通りの手法があります。

ここでは、両者の実践例について代表的な手法をいくつか紹介します。

バーバルコミュニケーション2つの手法

バーバルコミュニケーションとは、対話と言葉を介したコミュニケーション手法です。

ここでは代表的なテクニックとして、オープンクエスチョンとパラフレーズについて紹介します。

オープンクエスチョン

オープンクエスチョンは、話し手に対してYes/Noで返せない質問を行うことで、会話を途切れさせないためのテクニックです。

「今の話について、あなた自身はどう思っていますか」
「この問題が解決したあとは、次にどのようなことがしたいですか」
など、相手が答える範囲に制約を設けず、自由に回答してもらう質問を行います。
「そうですね」のような話を途切れさせる回答をさせないことで、返答内容から次の話題へとつないでいくことができます。

オープンクエスチョンはより多くの情報を相手から引き出したい場面で特に有効な手法ですが、回答の選択肢が多過ぎるとかえって相手に心理的負担をかけてしまいます。
そのため、オープンクエスチョンを行う場合は5W1H(いつ/どこで/誰が/何を/それについてどうやって、どう思って)などを用いて回答の幅を適切に制限し、相手が答えやすいように誘導するように意識すると良いです。

言い換えと要約を交えたパラフレーズ

パラフレーズとは、相手の言葉を別の言葉に置き換えてオウム返しする手法です。

ある程度相手が話し終えたところで、会話内容を適切に要約して相槌を打つことで、相手は自分の話を理解してくれていると感じ、より積極的に話が展開されていきます。
またパラフレーズでコミュニケーションを活発化する際には、よりポジティブな形に言い換えるのも効果的です。
たとえば、「なかなか諦められない」という話を「粘り強く頑張っているのですね」という話に転換します。

似た手法として、相手の行動や癖を真似ることで親密感を演出するミラーリングや、相手の言ったことを抜粋してオウム返しすることで会話に弾みをつけるバックトラッキングなども有名なバーバルコミュニケーションテクニックです。

ノンバーバルコミュニケーション4つの手法

ノンバーバルコミュニケーションとはつまり、会話や言葉の内容以外で行うコミュニケーション手法です。

ここでは代表的なテクニックとして、4つの傾聴姿勢について紹介します。

相手を尊重する目線

よそ見をせずに相手にしっかりと目線を合わせて話を聞くことは、傾聴姿勢の基本です。
逆にいえば、こちらに見向きもせずに生返事だけが返ってくるような相手とは、誰も深い話をしようとは思えません。

相手に視線を合わせることで、気が散っておらず、「あなたの話に興味を持っています」という意思を明確に示すことができます。

聞く姿勢

目線に加えて、体の向きや姿勢も傾聴に重要な要素です。
相手の方を向き、適度にリラックスした状態で、腕組みは止めて、やや前のめりな姿勢が望ましいです。
スマートフォンや書類は横に置き、決して”ながら聞き状態”ではないことを示しましょう。

ただし無理に意識して姿勢を作ろうとすると、かえって相手にプレッシャーを与えます。
正しい姿勢を意識するというよりは、相手の話に集中する気持ちで、相手を受け入れるような仕草を行うことが大切です。

ポジティブな表情

アクティブリスニングを行う際は、相手の警戒心や不安感を取り除くことが不可欠です。
無理に笑顔を作る必要はありませんが、話し相手にはリラックスしてもらえるように、できるだけ柔らかい表情を心がけます。

豊かな表情はそれだけで相手の警戒心を和らげてくれます。

相槌・うなずき

適度な相槌やうなずき、身振り手振りは、会話に拍車をかけるための大切なノンバーバルコミュニケーションです。
自身の話に聞き手が反応してくれている様を見ることで、安心して会話を続けることができます。
じっと黙って話を聞くのではなく、相手の話のリズムに合わせ、テンポよく相槌を返すように意識しましょう。

とはいえ、相槌やうなずきのペースが合わなければ、かえって話の流れを妨げてしまうこともあります。
最初は、適度にうなずく程度でも問題ありません。
経験を積むことで、自然と適切なペースがつかめるはずです。

 

アクティブリスニングのトレーニング方法

アクティブリスニングは元々心理療法の専門家が使っていた高度な技術です。
そのため習得するには積極的にトレーニングを行い、経験を積む必要があります。

アクティブリスニングを習得するためにはさまざまなトレーニング方法がありますが、この記事では日常での傾聴の意識、研修の活用、書籍での自主学習の3つに絞って紹介します。

日々の生活の中で傾聴を意識する

日々の生活の中で傾聴を意識することは、アクティブリスニングのトレーニングとして有用です。
まずは日々の「聞く態度」に少し注意を払ってみることをおすすめします。
たとえば、この記事でも紹介している「アクティブリスニングの実践例」の中から、手軽にできそうなものを意識して取り入れてみるのはいかがでしょうか。

現代のビジネス社会では、多くの人がさまざまなタスクに追われています。
そのため、会話中にスマートフォンを覗くなどの『ながら聞き』が習慣化しがちです。
しかし、どのような些細な会話でも真剣に耳を傾ける姿勢を示すことで、相手に信頼感を与えます。

アクティブリスニングは、一朝一夕で習得できる技術ではありません。
しかし日常の中で少し意識するだけでも、徐々に聞く力が向上していきます。
ときには同僚と、お互いの聴く姿勢や会話中の態度についてフィードバックし合うと、上達が早まります。
「ただ会話すること」に対し真摯に向き合い意識することで、より効果的に傾聴スキルを向上できます。

研修を活用する

本格的にアクティブリスニングを身に着けたい場合は、研修への参加をおすすめします。
体系的な技術を学べるほか、より良質なフィードバックを受け、自身の傾聴姿勢を見直すことができます。
いきなり研修に参加することにハードルを感じる方は、まずはインターネット上のオンライン講座を利用してみてはいかがでしょうか。

また個人の独学ではなく、会社全体でアクティブリスニングを取り入れる動きも活発になっています。
たとえば、日本マクドナルドでは早くから社員研修にCDP/CTDPと呼ばれるクルー開発プログラムを活用していますが、プログラムの中でアクティブリスニングの心構えや姿勢についても学びます。

社員研修を提供する外部サービスにもさまざまな形式の研修プログラムが登場しているため、内容や費用などを十分に検討して、自社に適した研修を取り入れてみるのも有用です。

書籍を読む

書籍を使った自己学習で、アクティブリスニングの基本を身につけるのもトレーニング方法の一つです。
最近は、さまざまな観点で書かれた専門書が多数刊行されているため、自分の習熟度に合わせて選ぶことができます。

ここでは、仕事の中で使えるアクティブリスニング実践方法について解説している本を3冊紹介します。

アクティブリスニング なぜかうまくいく人の「聞く」技術

十年以上世界中の著名人にインタビューを行ってきたフリーランスキャスターの筆者が、相手に気持ちよく話してもらう48の「聞く」技術を紹介するアクティブリスニングテクニック集です。

如何に相手から話を引き出すか、それによってどのようにコミニケーションの質を高めるかがわかりやすく紹介されています。

アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術

どのようなビジネスシーンでアクティブリスニングの実践を行うのかについて書かれた、ビジネスとアクティブリスニングをつなげるための専門書です。

ビジネスシーンでのコミュニケーションスキルを上達したい方におすすめです。

プロカウンセラーの聞く技術

プロのカウンセラーである筆者が、一般のビジネスパーソンに向けて心理療法のテクニックを解説している専門書です。

少々むずかしい話が登場しますが、プロが実際に行っているアクティブリスニングの手法や著者の実体験など、実践的な話を読むことができます。

アクティブリスニングを行う上で注意すべきこと

アクティブリスニングは現代のコミュニケーションに欠かせない技術ですが、注意すべきことも多いです。
もともとは、心理療法の専門家がカウンセリングに用いる高度な技術であることを忘れてはいけません。

この記事では、アクティブリスニングを行う際に特に注意するべきことを4つに分けて紹介します。

聞き手の精神的な負荷が大きい

そもそも人の話を注意深く聞くこと自体が精神を摩耗させる行為ですが、アクティブリスニングは輪をかけて精神的負担が大きい行為です。
アクティブリスニングを行う場合には、合わせて適度に休息などのリラックスする時間を取る必要があります。

またアクティブリスニングを行うように指示する立場ならば、チーム全体の休憩スケジュールへの配慮が必要です。
聞き手の負担を理解し、軽減する措置を取ることで全体の効率を向上させることができます。

問題の解決方法を提案するのには向かない

アクティブリスニングは、元々患者の悩みを聞き出すためのテクニックです。
フィードバックを行う場合も、聞き手側から直接解決策を提案することや問題点を指摘することは避けて、相手が自己解決することを重視します。

アクティブリスニングは、あくまで相手に胸襟を開いてもらうためのテクニックであり、問題解決を話し合う手法には向かないことに注意しましょう。
アクティブリスニングで聞き出した課題について問題解決を目指すならば、話し方を改めて切り替える必要があります。

他人と自分を切り離す努力が必要

医療のテクニックであったアクティブリスニングは、相手に寄り添いすぎるあまり相手の精神的重圧そのものを背負ってしまう危険性があります。
ましてや医者の立場とは異なり、仕事上の付き合いであれば相手を突き放すことも難しいです。

「どこまで相手と寄り添うのか」を意識的に区切り、公私を切り離すように心がけましょう。

正しい傾聴スキルの習得には時間がかかる

上記で紹介したように、アクティブリスニングは精神的負荷が大きく、公私を切り分ける技術が不可欠です。
元々が心理療法の高度な技術であるため、一朝一夕で身につくものではなく、十分な傾聴力を得るには多くの経験と時間が必要といえます。

「ただ話を聞くだけ」と侮らず、腰を据えて経験を積み上げる意識が必要です。
また、部下にアクティブリスニングを習得させたい立場ならば、長期的なトレーニングが必要な技術であることを知っておきましょう。

まとめ:アクティブリスニングを意識して活発なコミュニケーションを促そう

アクティブリスニングは、現代ビジネスには欠かせない傾聴力を高めるための重要な技術です。
相手の話に真摯に耳を傾けて積極的に関心を示すことは、自然と信頼関係を築き、仕事がスムーズに進める上で役に立ちます。

また、アクティブリスニングは、社内での信頼関係の構築や人材育成にも大いに役立ちます。
アクティブリスニングを実践することで、組織内で活発なコミュニケーションが促進され、ビジネスの成果向上が期待できます。
組織全体のマネジメント力を向上させるためにも、アクティブリスニングを積極的に導入することをおすすめします。

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投稿者プロフィール

樋口 裕貴
樋口 裕貴
1985年福岡生まれ
福岡発のインサイドセールス支援会社、soraプロジェクトの代表
スタートアップから外資大手まで700以上の営業支援プロジェクトの実績を持つ。
営業活動でお困りの会社様へターゲットリスト作成から見込み客育成、アポの獲得まで、新規開拓の実行支援が専門分野。